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第 381 回 東京レントゲンカンファレンス[2018年1月25日]
症例3 60歳代 女性 : 1ヶ月前より続く咳嗽
結節性硬化症に合併した
multifocal micronodular pneumocyte hyperplasia(MMPH)


 所見のまとめ

・両肺びまん性に数mmまでのGGN・小結節が多発。
・上葉優位、ランダム分布。
・薄壁性の嚢胞が散在。
・リンパ節腫大・胸水(−)。

 

 鑑別診断

・多発肺転移
・異型腺腫様過形成(AAH)
・感染症(粟粒結核・真菌など)
・サルコイドーシス
・LCH

 

 結節性硬化症(tuberous sclerosis complex: TSC)

・9番染色体上のTSC1遺伝子、もしくは16番染色体上のTSC2遺伝子の異常の結果起こる常染色体優性遺伝性疾患。
・全身の過誤腫性病変が特徴であり、脳、肺、心臓、腎臓、骨などの全身臓器に多彩な症状を示す。

改訂版 結節性硬化症の診断基準(2012)
【大所見】
1.顔面血管線維腫(3個以上)あるいは前額線維隆起斑
2.低色素性白斑(3個以上)
3.爪線維腫(2個以上) 
4.Shagreenパッチ(隆起革様皮) 
5.多発性網膜過誤腫
6.皮質異形成(皮質結節・白質放射状遊走線を含める、3箇所以上)
7.上衣下結節
8.上衣下巨細胞性星細胞腫
9.心横紋筋腫
10.リンパ脈管筋腫症
11.腎血管筋脂肪腫(2個以上)

【小所見】
1.歯エナメル陥凹(3箇所以上)
2.口腔内線維腫(2個以上)
3.非腎臓性過誤腫
4.網膜無色斑
5.散在性(Confetti)皮膚病変
6.多発性腎嚢胞

・確定診断 = 上記大所見2項目、あるいは大所見1項目と小所見2項目
・推定診断 = 上記大所見1項目、あるいは大所見1項目と小所見1項目、あるいは小所見2項目以上

 

 MMPH

・U型肺胞上皮細胞の過形成病変。
・TSCの30〜40%に合併。
・通常は無症状だが、呼吸困難、咳嗽、低酸素血症などを呈すことがある。
・CT所見は多発性のGGNあるいは充実性結節。


 最後に

・MMPHを契機に発見・診断されたTSCを経験した。
・TSCの表現型や症状は多彩であり、本症例のように高齢で発見される症例もある。

 

 


参考文献

  • Tuberous Sclerosis Complex: State-of-the-Art Review with a Focus on Pulmonary Involvement. Felipe Mussi von Ranke.Lung (2015) 193:619-627.
  • Imaging features of tuberous sclerosis complex with autosomal-dominant polycystic kidney disease: a contiguous gene syndrome. Susan J. Back. Pediatr Radiol (2015) 45:386−395.
  • 臨床画像2015 Vol31, No.10 増刊号 p65-72