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第 381 回 東京レントゲンカンファレンス[2018年1月25日]
症例5 60歳代 女性 : 心窩部不快感
卵巣甲状腺腫・S 状結腸癌
struma ovarii, sigmoid colon cancer


 女性骨盤内に多房性嚢胞性腫瘤
     
・両側卵巣と接する
・脂肪成分(ー)
・T2強調像_著しい低信号部分
    CT_高吸収
・隔壁増強効果(++)
・S状結腸壁肥厚 DWI_高信号(・子宮は同定できない)





「卵巣由来の可能性」
「脂肪なし」

「出血/粘液/コロイド」
「悪性成分/充実性成分」
「一元的/卵巣に関係無し」

1)S状結腸癌と粘液性嚢胞性腫瘍(境界悪性以上)
2)S状結腸癌と卵巣甲状腺腫
3)S状結腸癌同 卵巣転移

1)と3)の鑑別は難しく 1)または3)vs 2)の鑑別になる
腫瘤の輪郭とCTでの高吸収内容を重視すると、2)と診断できる

 

 Struma ovarii 卵巣甲状腺腫

・全卵巣腫瘍のうち0.3–1 % 、成熟奇形腫のうち 3 %
単胚葉性の奇形腫
・甲状腺組織が大半を占め、コロイドを含む濾胞あり
・50歳代に多い
甲状腺機能亢進症や捻転による症状が出るまで気がつかないことが多い
・初発症状は、腹痛や膨満感、腫瘤触知、不正出血等で、甲状腺機能亢進症状は5%程度
 腹水は 17 % 〜33.3 %。CA125 が上昇することあり
(本症例では1年間に複数回腹部の激痛があったので、卵巣腫瘤の茎捻転を生じた後に解除される発作を繰り返していたのかもしれない)
Radiographics 21:475–490, 2001
Insights Imaging 5:41–51, 2014
123-I 甲状腺シンチグラフィ:甲状腺と同程度の集積
Acta Endocrinol 73:266–272, 1973 ・C T:多房性嚢胞性腫瘤、嚢胞内容液高吸収(58-98HU)、時に石灰化、腹水
Abdom Imaging 36:627–631, 2011 ・MRI:多房性嚢胞性腫瘤(stained glass appearance)
 T2強調像で著しい低信号(コロイド)、造影像で充実成分が強く増強、時に腹水
Br J Radiol 73:87–90, 2000
Abdom Imaging 37:904–910, 2012

 

 

 まとめ

・基本中の基本、卵巣を両側とも確認することは重要である
・卵巣多房性嚢胞性腫瘤を見たら、結腸をよく観察する
・T2強調像での顕著な低信号を見つけることは有益だが、それだけで卵巣甲状腺腫と決めつけない
 (奇形腫の脂肪_脂肪抑制T2W、血腫、粘稠度の高い液体)
   →他の撮像の信号やCTの吸収値と比較

 

 


参考文献

  • Outwater EK, Radiographics 21:475−490
  • Dujardin MI, Insights Imaging 5:41−51
  • Brown WW, Acta Endocrinol 73:266−272
  • Shen J, Abdom Imaging 36:627−631
  • Matsuki M, Br J Radiol 73:87−90
  • Ikeuchi T, Abdom Imaging 37:904−910