膵solid pseudopapillary tumor solid pseudopapillary tumor of the pancreas(SPN) |
画像所見 |
dynamic CT
・PL/門脈優位相/平衡相
膵尾部の巨大な腫瘤。辺縁や内部に石灰化あり。
腹側1/3に嚢胞成分、背側2/3に充実成分あり。
・T2WI/DWI/ADCmap
腹側1/3はT2WIで辺縁低信号、内部高信号を示す。
背側2/3は充実成分と思われる。辺縁には被膜形成あり。
・T1WIf/s /動脈優位相
腹側1/3はT1WI f/sで辺縁は軽度高信号、内部は低信号を示す。
造影増強効果は受けない→出血を含む嚢胞成分。
・門脈優位相/遅延相
背側2/3は経時的に軽度の造影増強効果あり→充実成分。
・FDG-PET
腫瘤の充実成分にFDG集積(SUVmax:E:8.7/D:9.2)あり。
血管造影:腹腔動脈/上腸間膜動脈 |
腫瘤への主な栄養動脈は大膵動脈(→)である。
尾側は背側膵動脈の末梢(→)からも栄養されている。 |
画像所見のまとめ |
・膵尾部の巨大で境界明瞭な腫瘤。
・辺縁に被膜形成あり。辺縁と内部に石灰化あり。
・嚢胞成分と充実成分を含む。
・腫瘤の主な栄養動脈は大膵動脈の分枝。尾側の一部は背側膵動脈からも栄養されている。
・FDG-PETでは腫瘤の充実成分に集積を認める。
術前診断:Solid pseudopapillary tumor(SPT) 鑑別に神経内分泌腫瘍(NET)
術 式:膵尾部切除+横行結腸・脾・後腹膜合併切除
手術所見:膵尾部内の大きさ16*11*10cmの球状の腫瘤。
副腎や脾臓、大網への転移や直接浸潤なし。
摘出標本:マクロ割面像/脾実質 | |
膵尾部内にて球状を示す大きさ16*11*10cmの腫瘤。
被膜形成あり。充実成分と、出血・壊死を含む嚢胞成分あり。 |
HE染色 | |
嚢胞部分においては出血と壊死あり。
主膵管内進展なし、脈管侵襲なし、周囲への浸潤なし。 |
充実部分においては血管周囲に偽ロゼット構造あり。 淡明な細胞質と小型で類円形の核をもつ細胞からなる。 ※偽ロゼット構造:血管周囲に腫瘍細胞が放射状に配列する構造で細胞間の結合が弱い腫瘍で見られる。 |
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免疫(β-Catenin)染色 | 免疫(CD10)染色 | 免疫(Vimentin)染色 |
SPTを示唆するβ-Catenin,CD10,Vimentinが陽性。
一方、Ki-67標識率は1-2%程度であった。 NETを示唆するシナプトフィジン陽性、クロモグラニンA陰性。 |
SPTを示唆するVimentin陽性、α1アンチトリプシン陽性。 NETを示唆するソマトスタチン陰性、グルカゴン陰性、ガストリン陰性。NETに(非特異的に)発現するCDX2も陰性。 |
病理診断:Solid pseudopapillary tumor
Solid pseudopapillary tumor(文献1,3,4,5) |
・発生頻度は全膵腫瘍の0.17〜2.7%。
・WHO2010では低悪性度腫瘍と位置付けられている。
・若年女性に好発する腫瘍であり、90%が女性例である。
・男性例は女性例に比して発症年齢が高く、腫瘍径が小さい症例が多い。
・嚢胞変性は女性に比して少ないとされるが、石灰化を多く認める傾向にある。
・画像上は嚢胞成分と充実成分が混在する境界明瞭な腫瘤として認められる。
・嚢胞成分は出血、壊死による二次性の変化。
・被膜形成や石灰化を伴うことも多い。
・FDG-PETでは細胞高密度を反映して集積(SUVmax:3.4〜14.4)を認める。
膵癌のSUVmax値は5.5〜6.2とされており、SUVmax値からのSPTと膵癌との鑑別は困難。
・治療は外科的切除が第一選択となる。
・腫瘍の完全切除が可能であった場合は95%以上の症例で根治が可能。
・ただし転移や再発をきたす例もあり、長期のf/uが必要。
若年男性に発症した巨大なSPTを経験した。
参考文献
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