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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第386回症例 症例:呈示
第 386 回 東京レントゲンカンファレンス[2018年9月27日]
症例7 60歳代 男性
肺放線菌症
thoracic actinomycosis

 

 CT所見

・左上葉末梢胸膜直下にconsolidation。
・造影CTにて内部に低吸収領域、一部air(+)。
・周囲に胸膜肥厚。
・肺内?肺外?


 鑑別診断

・食道癌の再発
・肺癌
・肺感染症(肺膿瘍?膿胸?)
  結核
  ノカルジア
  クリプトコッカス
  ヒスプラズマ
  肺放線菌症

CT下肺生検
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病理:肺放線菌症
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PAS染色にてよく染まる放射状の菌を認める。肺放線菌症と診断された。

 

 

 肺放線菌症

・放線菌症・・・Actinomyces 属グラム陽性桿菌。口腔、腸管の常在菌。慢性肉芽腫性疾患。罹患率1/300000/年
・肺放線菌症・・・放線菌全体の約15%と比較的まれ。男女比=3:1。基礎疾患は齲歯、糖尿病、歯槽膿漏の順に多い。
 症状は血痰(30-60%)、喀血、咳嗽、発熱、胸痛。
・気管支、針生検による術前診断・・・10%未満。
・治療・・・2〜6 週間におよぶペニシリン系抗菌薬(ペニシリンG18-24百万単位/日)の
 点滴投与およびペニシリンVまたはアモキシシリン6〜12 カ月間の内服治療。
・蛋白分解酵素により肺炎から胸膜炎、膿胸を形成し、胸壁に浸潤する。
 胸壁浸潤は肺感染症から進展することが一般的だが、頸部や食道、腹部や後腹膜の直接進展によって起こることがある。
・食道癌術後の放線菌症・・・ 食道術後の放線菌症の報告あり。自験例2例、比較的多いかもしれない。
・画像所見・・・肺内結節や腫瘤。空洞形成、consolidation、内部にcentral LAA(70%)。
 ring like rim enhancement(77%)。炎症の臓側胸膜への波及を示唆する胸膜肥厚。胸水。
・CT所見にて分類
Parenchymal actinomycosis
Bronchiectatic actinomycosis
Endobronchial actinomycosis
Extrapulmonary spread
Han J-Y, Lee K-N, Lee JK, et al. An overview of thoracic actinomycosis: CT features. Insights into Imaging. 2013;4(2):245-252.


 Take home message

・肺野末梢に治らない胸膜肥厚を伴う異常陰影を見たときには、肺放線菌症も鑑別に挙げましょう。

 

 


参考文献

  • Han J-Y, Lee K-N, Lee JK, et al. An overview of thoracic actinomycosis: CT features. Insights into Imaging. 2013;4(2):245-252.
  • 池部智之,上島康夫,弓場達也,外科的切除を施行した肺放線菌症の一例.京府医大誌 2017;126(11):757-761.
  • 藤原 敦史, 奥村 典仁, 山科 明彦ら,外科的切除を行った肺放線菌症3例.日本呼吸器外科学会雑誌 2015; 29(1) :31-36.

 

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Moderator: 清野 哲孝