第 390 回 東京レントゲンカンファレンス[2019年2月28日]
副腎腫瘍を伴った家族性大腸腺腫症 familial adenomatous polyposis with adrenal tumor |
鑑別 |
・大腸ポリポーシス
—家族性大腸腺腫症
・MUTYH-associated polyposis
—Peutz-Jeghers症候群
—Cowden病
—若年性ポリポーシス
—家族性過形成ポリポーシス
・副腎腫瘍
・甲状腺結節
家族性大腸腺腫症 FAP:Familial adenomatous polyposis |
・生殖細胞系列におけるAPC遺伝子(adenomatous polyposis coli)の病的変異を原因とする常染色体優性遺伝性疾患
・日本での全人口における頻度は17,400人に1人と推測
・全大腸がん患者のうち1%未満がFAP患者と推定されている
・孤発例は約 30% ,欧米でも 37〜 45%。
・FAPは大腸腺腫密度により分類
—密生型FAP:腺腫が正常粘膜を覆うほど発生する
—非密生型FAP:腺腫が正常粘膜を覆わない程度で100個以上認められるもの
—attenuated FAP(AFAP):腺腫数が10個以上100個未満
大腸癌研究会 「遺伝性大腸癌診療ガイドライン2016年版」金原出版,2016
Murata M, Utsunomiya J, Iwama T, et al: Frequency of adenomatosis coli in Japan. Jpn J Human Genet 26: 9―36, 1981
診断
【臨床的診断】
(1)または(2)に合併する場合はFAPと診断する
(1)大腸にほぼ100個以上の腺腫を有する。家族歴の有無は問わない。
(2)腺腫の数は100個に達しないがFAPの家族歴を有する。
【遺伝子診断】
APC遺伝子の生殖細胞系列変異を有する場合にFAPと診断する。
*FAPの家族歴がない場合にはMUTYH関連ポリポーシスの可能性を否定できない。APC遺伝子の変異の部位(コドン)を含め遺伝学的検査をしておくと、治療法の選択やサーベイランスの参考になる
大腸癌研究会 「遺伝性大腸癌診療ガイドライン2016年版」金原出版,2016
大腸外随伴病変 |
胃底腺ポリポーシス
胃腺腫
十二指腸腺腫
十二指腸乳頭部腺腫
空・回腸腺腫
デスモイド腫瘍
頭蓋骨腫、顎潜在骨腫、過剰歯、埋没歯
類上皮腫
甲状腺癌
先天性網膜色素上皮肥大
肝芽腫
副腎腫瘍
脳腫瘍
死因の第1位は大腸癌(60%)
その他、十二指腸癌、デスモイド腫瘍(増加傾向)が主要な死因
大腸癌研究会 「遺伝性大腸癌診療ガイドライン2016年版」金原出版,2016
甲状腺癌 |
・FAP患者の1-6.1%に合併
・乳頭癌が大部分
・女性:男性=44:1
—女性の場合:一般集団に対する相対リスク23-160倍
・甲状腺癌契機でFAPと診断されることもある
・多発性:28.6-69%、両側性42-67%
・予後は良好
・サーベイランスの提唱:年1回の甲状腺の触診と超音波検査、10歳代後半から開始
大腸癌研究会 「遺伝性大腸癌診療ガイドライン2016年版」金原出版,2016
副腎腫瘍 |
・FAP患者の7.4-13%に副腎腫瘍を合併
—相対リスクは2.3-12.5倍
・男女比 ほぼ同じ
・両側性は23%
・診断時平均年齢は45歳、平均最大径2.5cm
・ホルモン産生性や悪性化は手術適応
—副腎悪性腫瘍の頻度は不明
・経過観察でもそれほど大きくならない
・他の大腸外随伴病変の頻度は副腎腫瘍あり、なしと変わらない
・良性病変が大半、サーベイランスの提唱はなし
大腸癌研究会 「遺伝性大腸癌診療ガイドライン2016年版」金原出版,2016
DISEASES OF THE COLON & RECTUM VOLUME 61: 6 (2018)
まとめ |
FAPにおいて様々な大腸外随伴病変を意識する
参考文献