第 392 回 東京レントゲンカンファレンス[2019年5月23日]
症例3 40歳代 女性:腹痛 |
胆嚢内乳頭状腫瘍 intracystic papillary neoplasm(ICPN) |
画像所見まとめ |
・境界明瞭な胆嚢内隆起性病変
・病変は胆嚢内に限局
・胆嚢壁に肥厚や変形は見られない
・動脈相からよく染まり平行相でも造影効果が遷延
・腫瘍は筋組織と比べてT2WIやや高信号
・腫瘍中心部に線状のT2WI低信号域、動脈相でよく染まる
・拡散強調像で淡い高信号
胆嚢内隆起性病変の鑑別 |
非腫瘍性病変 | 腫瘍性病変 | |
・コレステロールポリープ ・炎症性ポリープ ・胆嚢腺筋腫症 |
・胆嚢腺腫 ・胆嚢内乳頭状腫瘍(ICPN) ・胆嚢癌 ・転移 ・悪性リンパ腫 |
胆嚢内乳頭状腫瘍(ICPN)とは |
・ICPNは胆嚢内の乳頭状・ポリープ状腫瘍
・胆嚢癌の前癌病変・前浸潤性病変
・胆管内にできるとIPNB、胆嚢内にできるとICPNとされる
ICPNの病理学的定義と特徴
【ICPNの定義】
・粘膜内病変 intramucosal
・前浸潤性 preinvasive neoplastic (dysplastic)
・外方増殖性 mass forming; exophytic (papillary or polypoid)
・≧ 1.0 cm
・緻密/充実性 compact
・周囲の粘膜と異なる distinct from the neighboring mucosa
Adsay,et al. Am J Clin Pathol 2013:140:278-280.
【ICPNの組織学的特徴】
➀繊細な線維性血管芯を伴い、丈の長い腺管上皮が乳頭状や管状の多彩な増殖形態を示す
➁腺管上皮の異型度はさまざまに混在し、多段階発癌を示唆するadenoma-carcinoma sequenceの病態が見られる
➂多彩な細胞形質(膵胆道型、胃型、腸型、オンコサイト型)
肝胆膵71 (5) :895-903, 2015.
【ICPNの画像的特徴】※画像所見はまとまった報告は少ない
➀腫瘍サイズの割に周囲への浸潤や胆嚢壁の変形がない
➁腫瘍茎がみられる事がある
➂胆嚢腫大することがある(粘液産生することがある)
➃造影効果のある腫瘍
➄T2WIで筋肉よりやや高信号
【ICPNの予後】
・ICPNの予後は極めて良好。
・その予後は浸潤癌を伴うものでも5年生存率60%。
・通常の胆嚢癌の5年生存率30%と比較し有意に高い
take home message |
・WHO分類2010の改訂にて、胆嚢ICPNという新たな疾患概念が加わった
・ICPNは前癌病変や前浸潤性病変として位置づけられている
・胆嚢内に浸潤を伴わない乳頭状腫瘤をみた場合にICPNを鑑別のひとつに挙げる必要がある
参考文献