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第 392 回 東京レントゲンカンファレンス[2019年5月23日]

症例4 60歳代 男性:下痢
クロンカイトカナダ症候群
Cronkhite − Canada syndrome

 

 クロンカイトカナダ症候群

・1955年に初めて、内科医の Leonard W. Cronkhite Jr と放射線科医のWilma J. Canadaが下痢を主症状とし、
 消化管ホリホーシス、皮膚色素沈着、脱毛、爪甲 異常を伴う 2症例を報告した
・現在までに世界で500 例ほどしか報告のない希少疾患(日本からの報告が多い)
・非遺伝性
・原因不明
・診断時の年齢は平均 60 歳代
・男女比は男性に多く約 1.8 倍
渡辺知佳子ほか日消誌 2017;114:431-437

診断基準
主要所見 
1.胃腸管の多発性非腫瘍性ポリポーシスが見られる。とくに胃・大腸のポリポーシスが見られ、非遺伝性である。
2.慢性下痢を主徴とする消化器症状が見られる。
3.特徴的皮膚症状(Triad)が見られる。脱毛、爪甲萎縮、皮膚色素沈着
参考所見
4.蛋白漏出をともなう低蛋白血症(低アルブミン血症)が見られる。
5.味覚障害あるいは体重減少・栄養障害が見られる。
6.内視鏡的特徴:消化管の無茎性びまん性のポリポーシスを特徴とする。 
  胃では粘膜浮腫をともなう境界不鮮明な隆起、大腸ではイチゴ状の境界鮮明なポリープ様隆起
7.組織学的特徴:過誤腫性ポリープ(hamartomatous polyps (juvenile-like polyps)): 
  粘膜固有層を主座に、腺の嚢状拡張、粘膜の浮腫と炎症細胞浸潤をともなう炎症像。介在粘膜にも炎症/浮腫を認める。 

<診断のカテゴリー>
○主要所見のうち1は診断に必須である。
○主要所見の3つが揃えばDefiniteとする(1+2+3)。
○1を含む主要所見が2つあり、4あるいは6+7があればDefiniteとする。
  (1+2+4)(1+3+4)(1+2+6+7)(1+3+4+6+7)。
○1があり、上記以外の組み合わせで主要所見や参考所見のうちいくつかの項目が見られた場合は疑診(Possible)とする。

 特徴
[分布]
胃(特に前庭部)、大腸に密集した無茎性ポリープ
半数以上で小腸にもポリープや疣状変化
[病理組織所見]
腺管の嚢胞状拡張と蛇行をともなう過形成を呈し,ポリープ介在粘膜にも粘膜固有層の著しい浮腫・炎症がみられる。

ポリポーシスの鑑別
•遺伝性か非遺伝性かによる分類+組織学的分類を組み合わせることで病態を分類
田村和朗ほか日消誌 2017;114 403-412

遺伝性 非遺伝性
腺腫性 過誤腫性
家族性大腸腺腫症
(単純型、Turcot症候群、Gardner症候群)
ポイツ・ジェガース症候群 炎症性ポリポーシス
MUTYH関連大腸腺腫症 若年性ポリポーシス 良性リンパ濾胞性ポリポーシス
NTHL1関連ポリポーシス PTEN過誤腫症候群 クロンカイト・カナダ症候群
MSH3関連ポリポーシス    
ポリメラーゼ校正関連ポリポーシス    
体質性ミスマッチ修復欠損症候群    

[治療法]
副腎皮質ステロイド薬が有効
[予後]
治療が奏効するとポリープは消退することもあるが長期間を要する。
胃癌や大腸癌の合併が多いとの報告もあるが確定的ではない。

 

 Take Home Message

・クロンカイト・カナダ症候群は、慢性下痢を主徴とする消化器症状を有する非遺伝性のポリポーシスである。
・クロンカイト・カナダ症候群のポリポーシスは、胃前庭部と大腸に病変があることが特徴的で、
 CTにて多数の無茎性ポリープを反映した所見が得られた。

 


参考文献

  • 渡辺知佳子ほか. 日消誌 2017;114:431-437
  • 田村和朗ほか. 日消誌 2017;114: 403-412
  • 豊口裕樹ほか. 臨床画像 2016;32: 1020-1030