第 392 回 東京レントゲンカンファレンス[2019年5月23日]
症例8 50歳代 女性:CT を撮影したところ肝腫瘤を指摘。生検で肝細胞癌と診断された。 |
子宮内膜症由来の明細胞癌 clear cell carcinoma arising from endometriosis |
Findings |
・肝外に主座を置く嚢胞性の腫瘤である。
・嚢胞内容は血腫。
・造影される充実成分あり。
・境界明瞭で、肝臓以外の臓器への浸潤は指摘できない。
・リンパ節や他臓器への転移なし。
Endometriosis |
・子宮内膜組織が子宮以外の部位に生着した状態。
・定期的に出血を繰り返し、癒着を生じる。
Clear cell carcinoma |
・卵巣、子宮(内膜,頚部)に発生する腫瘍組織型の1つ。
※以下は卵巣明細胞癌について
・日本(を含むアジア)では卵巣癌の組織型として多い。
欧米(〜5%)< アジア(10%〜)< 日本(25%〜)
・家族歴、未経産、子宮内膜症などが危険因子である。
・TP53変異はなく、ARID1AやPIK3CAなどの変異が知られる。
・化学療法抵抗性で、進行癌では予後不良。
※ただし早期に発見できれば手術のみでも予後良好
Ovarian clear cell carcinoma |
・大きな嚢胞性腫瘤で、内部に乳頭状の充実成分を伴う。
・嚢胞内容はT1WIで高信号を示す。
・背景に内膜症の所見があれば、診断を支持する。
Clear cell carcinoma arising from endometriosis |
・子宮内膜症由来癌では明細胞癌が最多、次いで類内膜癌。
・部位別では卵巣から発生するものが最多。
・その他は稀だが、直腸腟中隔、結腸、腹壁などで報告あり。
Take home message |
・生検結果が正しいとは限らない。
・好発部位でなくてもその疾患は生じうる。
・異所性組織由来の腫瘍についても思いを馳せる。
参考文献