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第 395 回 東京レントゲンカンファレンス[2019年10月24日]

症例3 10歳代 女性:労作時呼吸困難
ゴーハム病
Gorham-Stout disease

 

 鑑別疾患

・Gorham-Stout Syndrome
・Fibrous dysplasia
・Langerhans cell histiocytosis
・Eosinophilic granulomatosis
・Paget’s disease (osteolytic form)
・Idiopathic multicentric osteolysis
・Multicentric osteolysis with nephropathy
・Carpal tarsal osteolysis
・Hajdu-Cheney syndrome 


 ゴーハム病

・1954年にGorhamとStautらが最初に報告。
・骨が溶解し、血管やリンパ管組織に置換する。
・乳び胸を伴う症例も多く、リンパ管腫症(generalized lymphatic anomaly)とは同一の疾患と考えられている。
・同義語:Vanishing bone disease
・患者数:国内100名程度。
・発症年齢:小児、若年者に多く発症
・原因:不明、遺伝性なし。
・予後:胸部病変を認める場合は不良。
・骨病変・軟部組織浸潤のみであれば良好
・症状:骨溶解は全身骨に起こる。
 —疼痛、病的骨折、側弯、四肢短縮、病変周辺の軟部組織の浮腫、リンパ管腫病変
 —内臓病変(肺、脾臓、腹水など)の合併
 —乳糜胸:約17%
・病理:溶骨部に血管・リンパ管内皮細胞の浸潤
・治療:根治治療は未確立だが、シロリムスの有用性に関する臨床試験が進行中(UMIN000030522)

リンパ管腫症・ゴーハム病診断基準
(1) a)-c)のうち1つ以上の主要所見を満たし、(2)の病理所見を認めた場合に診断
(1)主要所見
 a)骨皮質もしくは髄質が局在性もしくは散在性に溶解(全身骨に起こりうる)
 b)肺、縦隔、心臓など胸腔内臓器にびまん性にリンパ管腫様病変、またはリンパ液貯留
 c)肝臓、脾臓など腹腔内臓器にびまん性にリンパ管腫様病変、または腹腔内にリンパ液貯留
(2)病理学的所見
組織学的にはリンパ管内皮によって裏打ちされた不規則に拡張したリンパ管組織よりなり、一部に紡錘形細胞の集簇を認めることがある

ゴーハム病の骨病変の特徴
皮質骨から連続性、進行性に溶解→骨欠損
・周辺組織のリンパ浮腫やリンパ漏を起こす
関節構造は保たれる
・疼痛、病的骨折、側弯の頻度が高い
骨新生や反応性骨形成などは認められない
・急速に進行するが一時停止や寛解例もある


 Take home message

ゴーハム病・リンパ管腫症はまれな疾患であるが、「若齢者原因不明の骨溶解」の症例では鑑別に挙げるべきである

 


参考文献

  • Nicholas Brodszki,Acta Paedoatr,2011.100(11):1448-53
  • Hiroki Kato,Jpn J Radiol,2017.35: 606−612
  • Andreas Pfleger,J Pediatr Hematol Oncol,2006.28(4):231-3.
  • Peng Wang, BMC Musculoskelet Disord,2019.20(1):154. doi