第 395 回 東京レントゲンカンファレンス[2019年10月24日]
症例6 60歳代 男性:胸部CTで縦郭腫瘍を指摘され、徐々に増大。 |
心臓(心膜)血管腫 cavernous hemangioma of the heart |
心臓血管腫 |
疫学
・心臓原発の腫瘍は少なく発生頻度は0.017〜0.03%と稀。
・うち約7割が悪性、約3割が良性。
・原発性良性心臓腫瘍のうち、約半数が粘液腫。5〜10%が血管腫。
・性差はなく、やや若年(小児)に多いが、全年齢に発生しうる。
今井 靖子. 高齢者の右室内海綿状血管腫の1例. J Cardiol Jpn Ed 2013; 8: 163 – 167.
概要
・心臓血管腫の発生母地は右室(36%)、左室(34%)であり、それぞれ心臓腔内と腔外がほぼ半数ずつである。
・症状は乏しく、他の検査で偶発的に見つかる場合が多い。腔内発生の場合は血栓形成や流出路狭窄をきたす場合がある。
・組織学的には海綿状血管腫、毛細管性血管腫、蔓状血管腫、良性血管内皮腫に分けられる。
今井 靖子. 高齢者の右室内海綿状血管腫の1例. J Cardiol Jpn Ed 2013; 8: 163 – 167.
画像所見
・超音波:可動性良好で境界明瞭。
・CT:均一〜不均一。
・MRI:T1WI低〜等信号、T2WI高信号。
ダイナミックでは肝血管腫に類似した辺縁〜中心部への造影効果進展所見を示す場合がある。
・遅延造影MRIで濃染。
今井 靖子. 高齢者の右室内海綿状血管腫の1例. J Cardiol Jpn Ed 2013; 8: 163 – 167.
宇都宮大輔編著『心臓・血管疾患の画像診断』秀潤社, 2016, p184-185.
治療
・小さく無症状の場合は経過観察でもよいが、致死性不整脈をきたし突然死することもあり、原則的には手術が推奨される。
・粘液腫は術後再発する場合があるが、血管腫に術後再発の報告はなく、術後予後は良好である。
・本症例も超音波による術後経過観察が行われており、現在まで再発や術後合併症は認められない。
参考文献