第 396 回 東京レントゲンカンファレンス[2019年11月28日]
| 症例1 30歳代 女性:右臀部から下肢後面の疼痛、筋力低下 | 
| 脂肪形成孤立性線維性腫瘍 fat-forming solitary fibrous tumor  | 
      
| 鑑別診断 | 
(本例は仙骨部脊柱管〜仙骨孔発生の病変) 
  ・血管脂肪腫、脂肪腫のvariant
  ・脱分化型脂肪肉腫 
  ・神経鞘腫(+変性による脂肪沈着) 
  ・血管筋脂肪腫/PEComa
  ・Solitary fibrous tumor(fat-forming variant)
| Fat-forming solitary fibrous tumor(FFSFT) | 
・SFTにはcellular, fibrous, myxoidなどの様々成分が見られる 
  ・Fat-forming variantでは通常型もしくは富細胞型のSFTに様々な量の成熟脂肪を伴う 
  ・本例は病理学的にも成熟脂肪様細胞が確認され、免疫組織学的にSTAT6が陽性であったことから、
   変性ではなく腫瘍の分化による脂肪形成と考えられた 
  ・SFTとFFSFTとの間には臨床病理学的相違なし 
  ・SFTと同様に悪性の報告もある 
  ・男女比 = 3:2
    J. Jpn. Soc. Clin. Cytol. 2015;54:47-53.・深部軟部組織、大腿、体幹、後腹膜、頭頸部など様々な部位に発生 
  ・これまで50例以上の報告がある 
  ・画像的にはSFTの画像所見に加えて、マクロな脂肪が見られるが、その割合は腫瘍によって様々であり、
   脂肪肉腫と区別できないような症例も報告されている 
    Park CY. Br J Radiol. 2011;84:e203-5.・本例は仙骨部発生だが、脊柱管内の報告はこれまで1例のみ 
    de Carvalho AD. J Radiol Case Rep. 2013;7:1-7.
| 血管脂肪腫(angiolipoma) | 
・成熟脂肪組織内に血管様組織(10-45%)が増殖 
  ・胸椎の脊髄背側に好発し、腰椎は稀 
  ・血管成分がT1WI低信号を示す 
  ・血管組織によるflow voidは通常認めない 
    整形外科と災害外科. 2013;62:149-152.
    エキスパートのための脊椎脊髄疾患のMRI 第3版 
| FFSFTと血管脂肪腫の鑑別 | 
・血管脂肪腫は脂肪と血管からなる腫瘍のためADC値は高いと考えられる(ただし報告は少ない) 
    Wang et al. BMC Res Notes 2017;10:128.・この点は富細胞成分のあるFFSFTとの鑑別になりうる(本例でもADCの低下した成分がみられた) 
  ・脊柱領域での発生は極めて稀だが、Angiomyolipoma/PEComaとの鑑別は難しいかもしれない 
| Take home message | 
・SFTには脂肪を形成するvariantがある
  ・脂肪に加えて、多血性の富細胞成分、線維化などの存在に気づいたら鑑別に 
参考文献