第 396 回 東京レントゲンカンファレンス[2019年11月28日]
症例7 70歳代 男性:骨盤内腫瘤 |
尿管デスモイド ureteral desmoid |
デスモイド腫瘍 |
・筋膜や結合織、腱膜から発生する線維性腫瘍。
・良悪性中間腫瘍で分化度の高い線維芽細胞が増殖する。
・発生場所により腹腔内, 腹壁, 腹壁外に分類される。
・浸潤性増殖と高い局所再発率が特徴で, 完全切除が原則。
・組織修復遺伝子の異常とそれに刺激因子が加わって発症するとされる。
デスモイド腫瘍の画像所見
(CT)
・CTでは筋肉と同程度の吸収値で非特異的な腫瘤像を示す。
・myxoid changeでは内部低吸収値を示すことも(胸壁由来が多い)。
・造影増強効果は血管密度によって多彩。
・石灰化を来さないことが鑑別点として重要。
(MRI:形態的特徴)
*特徴的 (割合:83%):筋膜に沿った浸潤傾向the fascial tail sign
・周囲組織と境界が明瞭
・辺縁rim状の脂肪組織
・Split – fat sign
Radiographics ; 2009 ; 29 : 2143-2176.(MRI:内部性状)
細胞成分優位
経時的な線維成分の増殖に伴い, 内部低信号領域の割合が大きくなる。
Eur. Radiol ; 7(1997) : 1013-1019.
考察(主な成因について)
・腹腔内デスモイド腫瘍の3割が手術の既往あり。
・外的刺激が発症に関与している可能性が非常に高いとされている。
・発症までの期間は術後平均2年程度が多い。
日外科系連会誌 43(2) :273-278 2018.・妊娠に伴い腫瘍が増大した, 閉経に伴い腫瘍が縮小したとの報告あり。
・腫瘍の増大にエストロゲンが関与しているとの可能性が示唆されている。
治療目的で使用されたエストロゲン製剤が腫瘍発育に関与した可能性がある。
日臨外会誌 71(12), 3223-3226, 2010.
画像所見の考察(鑑別について)
・デスモイド腫瘍において線維成分は中心部や辺縁部から増生する。
・その過程で見られる帯状や線状の低信号域は比較的特徴的な所見。
→62〜91%程度
本症例は内部均一な低信号腫瘤であった。
→内部に帯状・線状の低信号域があれば鑑別に寄与したかもしれない。
Eur. Radiol ; 7(1997) : 1013-1019.
Take home message |
T2WIで内部低信号域を有する線維性腫瘍において手術の既往がある場合はデスモイド腫瘍の可能性も念頭に。
参考文献