第 397 回 東京レントゲンカンファレンス[2020年1月23日]
症例4 40歳代 男性:左上腹部痛 |
傍神経節腫の自然破裂 spontaneous rupture of paraganglioma |
傍神経節腫と褐色細胞腫 |
いずれもクロム親和性細胞から発生し、副腎髄質を母体とするものは褐色細胞腫、副腎以外の傍神経節から発生したものは傍神経節腫と呼ばれ、組織像は同様である。
副腎外では傍大動脈領域、頸部、縦隔などの発生例が多く、成人に好発する。
栄養血管、腫瘍内の毛細血管が豊富で出血・嚢胞化をきたしやすい。
出血・破裂について
自然出血ないし破裂の頻度は文献上稀とされ、明らかではない。
機序は豊富な栄養血管が関与している可能性があるが、詳細は不明である。
本症例は腫瘍に被膜がなく周囲に浸潤がみられ、出血による腫瘍内圧上昇、壊死、周囲への血腫進展が起きたと考えられる。
クリーゼにおいては破裂が進行してカテコラミン放出が減少すると血圧低下が生じるとされる。
画像所見ほか
Dynamic CTで充実部は早期濃染を来すが、壊死部や嚢胞変性は増強効果に乏しい。
MRIでは壊死や出血を反映し、非特異的所見を呈する。123I-MIBGでシンチグラフィで集積を示す。
鑑別診断としては副腎腺腫、副腎癌、転移性副腎腫瘍などが挙げられるが、カテコラミンの過剰産生や血圧の変動が重要な臨床情報となる。
治療について
褐色細胞腫の自然出血ないし破裂に対する塞栓術の有用性を報告した文献は散見されるが、確立された治療法はない。
本症例は緊急手術のリスクが大きくTAEが選択されたが、手技後は疼痛が内科的にコントロール可能となり、発症24日で手術施行できた。よって塞栓術は治療のfirst choiceとして適切であったと思われる。
Take home points |
・褐色細胞腫や傍神経節腫など、カテコラミン産生腫瘍が出血・破裂をきたすことがある。
・血圧の激しい変動やカテコラミンの過剰産生は臨床情報として非常に重要である。
・TAEを施行、良好な経過を得た報告があり、本症例も疼痛などのコントロールの点でTAEは有用であった。
参考文献