第 398 回 東京レントゲンカンファレンス[2022年11月24日]
症例4 40歳代 男性:進行性の非流暢性失語,構音障害,右顔面のしびれ |
胸腺腫合併抗GABAA受容体抗体陽性脳炎 Anti-GABAA receptor encephalitis in a patient with thymoma |
診断 |
・胸腺腫を合併した抗GABAA受容体抗体関連自己免疫性脳炎
・Autoimmune encephalitis with autoantibodies to GABAA receptor in a patient with thymoma
自己免疫性脳炎 |
・自己免疫性脳炎とは、細胞内や細胞表面の抗原に対する自己抗体が関与し、中枢神経が障害される疾患のこと。
・現在約40種類の抗体が報告されており、新たな抗体の報告も続いている。
・傍腫瘍性に発症することがあり、原因抗体と関連する腫瘍の種類にはそれぞれ特徴がある。
抗GABAA受容体抗体関連自己免疫性脳炎 |
・2014年から約70例の報告がある。
・患者の平均年齢は約40歳。
・GABAA受容体のサブユニット(α1、β3、γ2)に抗体が反応。GABAA受容体とは細胞膜表面に発現しているイオンチャネル型受容体。
【症状】
・てんかん発作が多く、痙攣重積に移行する。その他に認知障害、行動障害、意識障害、異常運動が報告されている。
・30-40%に腫瘍合併があり、胸腺腫が最多。
【画像所見】
・自己免疫性脳炎は画像所見が非典型的もしくは正常であることが多いが、本疾患で画像所見が正常なことはまれ。
・多発性の大脳皮質・皮質下T2WI/FLAIR高信号病変。
・前頭葉・側頭葉・頭頂葉に通常両側性に病変が分布し、小脳・脳幹病変はまれ。
・mass effect、造影効果、拡散制限はない。
【治療】
・治療は免疫療法や抗てんかん薬。
・腫瘍合併例は手術を検討。
結語 |
・自己免疫性脳炎には腫瘍随伴症候群としての側面があり、合併した腫瘍の種類が鑑別に役立つ。
・抗GABAA受容体抗体関連自己免疫性脳炎は重症例も多いが、早期に治療開始できれば完治も見込めるため、迅速な診断が重要である。
参考文献