ANCA関連血管炎、ANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV) ANCA associated vasculitis, Otitis media with ANCA associated vasculitis |
患者像まとめ |
・80代女性
・急性の聴力低下をきたした難治性両側性中耳炎(右:混合性難聴)
・来院時には頭痛も出現
・炎症反応(WBC,CRP)高値
オージオグラム(X+16日) | |
臨床経過 |
・急性中耳炎+肺septic emboli +髄膜炎を疑い抗生剤加療開始するも治療奏効乏しい
(培養陰性)
→感染症以外?
・MPO-ANCA (+)5355.0 IU/mL
・PR3-ANCA 0(ー)0.7 IU/mL
・その他膠原病関連の各種自己抗体(ー)
・T−SPOT陰性
・下腿の皮膚生検を行ったが、壊死性血管炎は同定できず
解答
ANCA関連血管炎 ANCA associated vasculitis; AAV
ANCA関連血管炎性中耳炎 Otitis media with ANCA associated vasculitis; OMAAV
右骨伝導低下は改善。 軽度聴力低下があるが、治療後から現在まで聴力は維持されている。 |
全身型ANCA関連血管炎3疾患とOMAAV |
Auris Nasus Larynx 2021 482-14DOI: (10.1016/j.anl.2020.07.004) |
OMAAV |
・ANCA関連血管炎に随伴する難治性中耳炎 2ヶ月以内に突然進行性の難聴になる。
・早期治療介入がQOL維持や生命予後に重要。
・中高年女性に多い。
・MPO-ANCAまたはPR3−ANCA陽性。本邦ではMPO-ANCA 60%, PR3-ANCA 19%, 両方陰性 16%と報告される。
・重要な合併症:顔面神経麻痺や肥厚性硬膜炎。
・治療は副腎皮質ステロイド+免疫抑制療法。
A)臨床経過 次のうち、少なくとも1つ
@抗生剤や鼓膜換気チューブ挿入に抵抗性の難治性中耳炎。
A骨伝導聴力レベルの進行性の低下。
B)臨床的特徴 次の臨床所見のうち少なくとも1つ:
@すでにAAV(GPA、MPA、EGPA)と診断されている。
A血清MPO-ANCAまたはPR3-ANCA陽性
BAAVと一致する組織像
C耳以外のAAV関連病変の徴候・症状を少なくとも1つ伴うこと(眼、鼻、咽頭・喉頭、肺、腎、顔面神経麻痺、肥厚性硬膜炎など)
D副腎皮質ステロイドの投与で一過性の症状・徴候の緩和と、治療中止による再発。
C)他の難治性中耳炎が除外されていること。
真珠腫性中耳炎、コレステリン肉芽腫、好酸球性中耳炎、結核性中耳炎、
悪性外耳道炎(頭蓋底骨髄炎)、腫瘍性疾患(癌など)、
ANCA関連血管炎以外の自己免疫性疾患による中耳炎および内耳炎
OMAAVの画像所見 |
・OMAAVは通常の中耳炎と同様所見で特有の画像所見は呈さない。
・他部位の画像所見や臨床経過との併せ技で疑う必要がある。
・頭痛がある場合、肥厚性硬膜炎合併の可能性 →頭部造影MRI撮影が推奨される。
結語 |
・ANCA関連血管炎の中にOMAAVという疾患概念が提唱されている。
・繰り返す中耳炎や難治性中耳炎を見たときには血管炎も鑑別に入れた上で全身の画像をみる。
参考文献
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