第 399 回 東京レントゲンカンファレンス[2023年2月16日]
症例7 30歳代 女性:意識障害 |
自己免疫性GFAP アストロサイトパチー autoimmune glial fibrillary acidic protein astrocytopathy |
軟膜を主体に異常濃染を来す疾患の鑑別 |
1)感染症:細菌、真菌、結核など
2)腫瘍:胚腫、膠芽腫、髄芽腫、松果体芽腫、上衣腫、
AT/RT, Embryonal Tumors, diffuse midline glioma, Rosette-forming glioneronal tumor,
転移 (乳癌, 肺癌, 胃癌, 悪性黒色腫など)、 Leptomeningeal melanosis, Diffuse leptomeningeal glioneuronal tumor,
Leptomeningeal lymphomatosisなど
3)肉芽腫性病変:サルコイドーシスなど
4)自己免疫性疾患:慢性関節リウマチ、 Vogt-小柳-原田病、再発性多発軟骨炎(Relapsing Polychondritis)、
抗MOG 抗体関連疾患、抗GFAPアストロサイトパチー、Bechet病など
5)その他、IgG4関連疾患、遺伝性トランスサイレチンアミロイドーシス (FAP)
拡散制限を伴う脳梁膨大部病変 |
1)感染:アデノウイルス、インフルエンザウイルス、無菌性髄膜炎、レジオネラ、マイコプラズマなど
2)腫瘍:急性リンパ性白血病、食道癌など
3)代謝性疾患:急性腎不全、アルコール中毒、高アンモニア血症、低血糖、電解質異常
4)薬剤:抗けいれん薬、ステロイド、シクロスポリン、FU剤、メトロニダゾールなど
5)その他:脳出血、外傷、ワクチン投与後、自己免疫性脳炎、けいれん、分娩後脳症
神経内科疾患の画像診断 2
抗GFAPアストロサイトパチー |
1)アストロサイトの細胞内骨格であるグリア線維性酸性蛋白質(GFAP)に対する抗体陽性を示す、
2016年に報告された炎症性中枢性疾患群。
2)抗GFAP-α抗体自体に病原性はない。
病理学的に軟膜へのリンパ球浸潤が確認され、GFAP反応性細胞障害性T細胞の関与が疑われる。
3)他の自己免疫性脳炎とのoverlapや、HSVなどウイルス脳炎後、外傷後、腫瘍に随伴して抗体が検出されることがある。
4)症状:発熱、頭痛を初発とし(髄膜炎様)、意識障害や髄膜炎徴候、
運動障害(振戦、ミオクローヌス、運動失調)および自律神経機能障害(主に排尿機能障害)、低ナトリウム血症など
5)性差・年齢:性差なし。小児〜高齢者まで様々。一般的にステロイド反応良好だが、再発の報告もある。
6)髄液所見:リンパ球優位の細胞数増加、蛋白上昇、ADA高値 (病勢と相関)
Journal of Neuroimmunology. 2019;332:91−98.
Intern Med.2021;60:3031-3036
MR所見 |
1)脳室から血管周囲に沿った放射状の造影効果 (44~53%)
鑑別:CLIPPERS,NMOSD, 抗MOG抗体関連疾患, PCNSV, サルコイドーシスなど
2)両側視床後部(視床枕)のT2延長域 (43%)
鑑別:Fabry病、Vcjd, ADEM, けいれん後など
3)Eoin Pらの報告では頭部MRI32症例のうち、7例(22%)にGd-T1WIで軟膜に造影効果が認められたと報告している。
Journal of Neuroimmunology. 2019;332:91–98.
Ann Neurol. 2017;81:298-309.
Take home message |
1)今回、われわれは典型的なMR所見より
軟膜の異常濃染、脳梁膨大部病変が先行した抗GFAPアストロサイトパチーの1例を経験した。
2)髄膜炎様の臨床症状および髄液ADA値の高値は、本疾患の特徴であり、診断の契機になる。
参考文献