第 399 回 東京レントゲンカンファレンス[2023年2月16日]
症例8 30歳代 女性:下痢 |
里吉病 Satoyoshi syndrome |
里吉病 |
・里吉 榮二郎先生が1963年に報告した疾患→ 今までに70例程度の報告がある。
・原因不明だが自己免疫の関連が疑われている
・下痢、脱毛、有痛性痙攣が特徴的症状
・男女比1:2. 女性は子宮の萎縮(無月経)がほぼ必発
・小児期の発症が多いが、成人発症もある
・治療はダントロレンやステロイド
・10年程度の予後であったが、治療により予後が伸びている
・2018年に里吉病の消化管病変が癌の発生母地となりうることが報告されている。
【消化管病変について】 | |
内視鏡所見: | Kerckring襞の消失 まだら発赤調の粘膜を背景に散布性白斑 大小不同のポリープ様隆起、微細顆粒状の変化 |
病理所見: | 線維性肥厚と慢性炎症細胞浸潤 腺嚢胞性拡張と多発する深在性嚢胞 |
【消化管ポリポーシス】 |
疾患 | サイズ | 里吉病との鑑別点 | |
遺伝性 | 家族性大腸腺腫症 | 5mm | 家族歴 |
若年性ポリポーシス | 10mm | 家族歴 | |
Peutz-Jeghers症候群 | 様々 | 家族歴+皮膚症状あり | |
Cowden病 | 2-5mm | 家族歴+皮膚症状あり | |
非遺伝性 | 炎症性ポリポーシス | 5mm程度 | 症状+大腸に多い |
良性リンパ濾胞性 | 5mm程度 | 無症状 | |
Cronkhite-canada症候群 | 5〜10mm | 爪甲萎縮、色素沈着 | |
里吉病 | ? |
【画像所見について】
・消化管病変についてのまとまった報告は無い。
・今回の2症例では消化管に多発する嚢胞性病変が指摘できる。
他の消化管ポリポーシスと比較して、以下の点を認めた。
CTで確認できる大きさの嚢胞が多発している。
粘膜面の造影効果が目立つ。
→病理では慢性炎症による嚢胞と線維化が報告されており、画像所見でも炎症と線維化を見ていると思われる。
Take Home Message |
・消化管ポリポーシスに下痢、脱毛、有痛性痙攣のいずれかを伴っていたら里吉病が鑑別にあがる。
・発癌の可能性も報告されているため、継続的なフォローアップが重要である。
・里吉病のCT所見の報告はないが、今回の2症例では消化管に比較的大きい嚢胞が多発して認められた。
参考文献