第 401 回 東京レントゲンカンファレンス[2023年5月25日]
症例2 80歳代 男性:意識障害 |
辺縁系脳炎を伴う再発性多発軟骨炎 relapsing polychondritis with Limbic encephalitis |
再発性多発性軟骨炎(Relapsing polychondritis; RP)について |
【疾患】
耳、鼻、気管、末梢関節などの軟部組織を侵す全身炎症性疾患
⇒炎症細胞浸潤によるプロテオグリカンの消失、軟骨基質の変性・破壊
MMP-3上昇(リウマチ因子陰性)
Relapsing polychondritis; RP
①両側耳介軟骨炎
②非びらん性、RF陰性の多関節炎
③鼻軟骨炎
④眼の炎症
⑤気管軟骨炎
⑥蝸牛/前庭神経症状
McAdamら:上記3項目以上
Damiani and Levine:
・上記1項目+組織診断
・上記2項目+ステロイドに反応性
Michetら:
・耳介、鼻、気管軟骨のうち2つ以上に炎症所見
・耳介、鼻、気管軟骨のうち1つ以上
+眼の炎症/聴力低下/前庭神経症状/血清学的陰性の炎症性関節炎
・軟骨炎:両側性耳介軟骨炎(90%), 鼻軟骨炎(53%, 初発時24%), 喉頭気管気管支(50%, 初発時10%).
・多関節炎(50-85%): 初発時は33%. 急性, 間欠性. 中手指節関節, 近位指節間関節, 膝に好発.通常びらんや変形は伴わない.
・眼症状(50-60%):上強膜炎, 強膜炎, 結膜炎が多い.
・皮膚症状(17-37%):アフタ,四肢に限局する結節, 紫斑や丘疹, リベド, 潰瘍, 壊死
・心血管(25%):心臓弁膜症, 大動脈瘤, 大動脈解離, 心筋炎, 心膜炎, 房室ブロック
・合併疾患(30%):悪性腫瘍(特にMDS), 自己免疫性疾患, 関節リウマチなど
RPと中枢神経症状
・抗 II 型コラーゲン抗体による血管炎機序の脳循環障害や、
抗 GluN2 抗体によるニューロンを標的とした神経障害などの可能性が指摘されている
・Suzukiらによると, 日本ではRP患者の12%(28/239例)で中枢神経合併症を認めた.
・中枢神経病変を持つRP患者は耳病変を有することが多く, 喉頭/気管病変を合併しないことが多い
RPの画像所見
耳介:CTで耳介・外耳道にかけて軟部組織腫脹→腫脹に一致して造影後脂肪抑制T1強調像で造影増強効果・拡散制限あり
脳:
・辺縁系脳炎
→海馬, 扁桃体を含む両側側頭葉内側にT2WIやFLAIR像での対称/非対称性高信号.
拡散強調像で高信号を認めることもある.
線条体や深部白質病変も慢性期では脳萎縮, 脳室拡大を伴うこともあり
・髄膜炎→髄膜の肥厚, 異常造影増強効果
・呼吸器:
気管・気管支壁の肥厚
気道狭窄・軟化
気道壁の石灰化とair trapping
縦隔リンパ節腫脹
・眼窩
眼球周囲の軟部組織の腫脹, 造影増強効果
辺縁系脳炎 |
・感染症 ヘルペスウィルス, 水痘・帯状疱疹ウィルス, 神経梅毒, エンテロウイルス
・自己免疫性疾患に関連する脳炎 橋本病, 全身性エリテマトーデス, Sjogren症候群, 関節リウマチ
・自己免疫性脳炎 多くの場合様々な自己抗体が関連する 例) 抗NMDA抗体, 抗Hu抗体, 抗Ma2抗体, 抗GAD抗体
⇒傍腫瘍性 胸腺腫, 肺小細胞癌, 乳癌, 精巣胚細胞腫瘍, 卵巣奇形腫, Hodgkinリンパ腫
・脳梗塞
・痙攣後脳症
・腫瘍
結語 |
・辺縁系脳炎を見たときにはRPも鑑別に挙げ、耳の腫脹がないか確認するべきである
参考文献