| 精巣類表皮嚢胞
epidermoid cyst of the testis |
| 画像所見 |
【US】
・内部不均一な充実様エコー、層状のエコーパターン → onion-ring pattern, target appearance
・明らかな血流シグナルなし
 |
類表皮嚢胞(epidermoid cyst)疑い |
【MRI】
・円形、辺縁整、境界明瞭。
・T1強調画像低信号が主体で、一部淡い高信号。
・T2強調画像では高信号を主体とし、内部に層状の低信号域が散在。辺縁は低信号。
・拡散強調像高信号/ADC map低値。
・内部に増強効果なし。
| 鑑別診断 |
| セミノーマ | 非セミノーマ | 悪性リンパ腫 | 類表皮嚢胞 | |
| 臨床所見 | 思春期後に発生、50歳以上では頻度が低い。 AFP上昇→胎児性癌、未熟奇形種、卵黄嚢腫瘍 hCG上昇→絨毛癌、合胞性栄養膜細胞を伴うセミノーマLDH上昇→セミノーマ |
50歳以上で多い。 | 10代～30代での報告が多い。 | |
| MRI所見 | T2強調像で比較的均一な低信号腫瘤。 内部に線維成分と血管成分に富む低信号隔壁が認められることがある。 |
腫瘤内部は不均一、出血を認めることがある。 | びまん性、対称性の精巣腫大。 精巣上体や精索へ進展しやすい。T1強調像等信x号、T2強調像低信号。 造影では精巣縦隔から放射状に伸びる隔壁構造が保たれた状態で描出されることがある。 |
T2強調像で辺縁は低信号を示し、周囲組織と明瞭に区別できる。 T2強調像で精巣実質と等～高信号、拡散強調像で精巣と同等以上に高信号。 造影MRIではまったく増強されない。 |
| 日本泌尿器科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会・日本臨床腫瘍学会 編. 『精巣腫瘍取扱い規約 第4版』. 2018年. |
| 経過 |
 |
| 左 初診時／右 2.5年後 |
画像所見から、類表皮嚢胞(epidermoid cyst)を疑い経過観察 →大きさは3cm程度のまま、明らかな増大なし
画像診断
精巣類表皮嚢胞：epidermoid cyst of the testis
| 精巣腫瘍の組織分類 |
(1) 胚細胞腫瘍 (Germ cell tumor)
(2) 精索間質性腫瘍 (Sex cord-stromal tumors)
(3) 胚細胞および精索間質成分両者を持つ腫瘍 (Tumor containing both germ cell and sex cord-stromal elements)
(4) その他の精巣腫瘍 (Miscellaneous tumors of the testis)
(5) 血液リンパ組織性腫瘍 (Hematolymphoid tumors)
(6) 集合間と精巣網の腫瘍 (Tumors of collecting ducts and rete testis)
(7) 傍精巣組織の腫瘍 (Tumors of paratesticular structures)
(8) 精管および精巣付属器の間葉系腫瘍 (Mesenchymal tumors of the spermatic cord and testicular adnexa)
(9) 転移性腫瘍 (Metastatic tumors)
| (1)胚細胞腫瘍 (Germ cell tumor) | ||
| 1. GCNIS(Germ cell neoplasia in situ)由来胚細胞腫瘍 いわゆるセミノーマ、非セミノーマ性胚細胞腫瘍など。 |
||
| 2.GCNIS非関連胚細胞腫瘍 | ||
| a. 精母細胞腫瘍 | ||
| b.奇形腫, 思春期前型：遠隔転移は生じない。内・中・外胚葉成分から構成される。 ①皮様嚢腫 ②類表皮嚢腫：肉眼的に嚢胞性病変で、内部にケラチン様物質を認める。 嚢胞壁は成熟した表皮(扁平上皮)成分のみから構成。 ③高分化神経内分泌腫瘍, (単胚葉性奇形種) |
||
| c.奇形腫・卵黄嚢腫瘍混合型, 思春期前型 |
||
| d.卵黄嚢腫瘍, 思春期前型 | ||
日本泌尿器科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会・日本臨床腫瘍学会 編. 『精巣腫瘍取扱い規約 第4版』. 2018年.
| 精巣腫瘍の組織分類精巣類表皮嚢胞 について |
| ・切除された精巣腫瘤のなかでは1~2%と稀だが、良性腫瘍では最多。 ・腫瘍マーカーは上昇しない。 |
||
| ・ほとんどの症例は無痛性の精巣腫大で発症する。 ・10歳代～30歳代の報告が多い。 ・右側に多い。 |
 |
悪性を含む、他の胚細胞腫瘍と共通の臨床的特徴 |
・良性病変が疑わしければ、精巣温存(経過観察や腫瘍核出術)も選択肢。 ・悪性胚細胞腫瘍合併例の報告があり、注意が必要 (精巣腫瘍取扱い規約の分類上は奇形種, 思春期後型？)。 |
||
Jae-Ho Cho et al. Sonographic and MR Imaging Findings of Testicular Epidermoid Cysts. AJR Am J Roentgenol. 2002 Mar;178:743-8.
Petra Anheuser et al. Testicular epidermoid cysts: a reevaluation. BMC Urol. 2019 Jun 11;19:52.
精巣類表皮嚢胞 ：画像所見
【超音波】
・嚢胞性、円形
・onion-skin(ring) appearance/target appearance/laminated appearance(図1)：内部に 層状の低～高エコー。60%程度でみられる。
・カラードップラー法や造影超音波で血流なし(図2)
【MRI】
・T1強調像は低信号が多い。T2強調像は高信号(均一/不均一)、拡散強調像高信号(ADCの低下ないことが多い) (図3)
・造影MRIで辺縁のみ増強、内部に増強効果なし(図4)
・bull’s eye/target appearance：T1強調像やT2強調像で中心部低信号、中間部高信号、辺縁低信
 |
|||
| 図1：US Bモード | 図2：US カラードップラー法 | 図3：MRI T2強調像 | 図4：MRI 造脂肪抑制T1強調像 |
Jae-Ho Cho et al. Sonographic and MR Imaging Findings of Testicular Epidermoid Cysts. AJR Am J Roentgenol. 2002 Mar;178:743-8.
Petra Anheuser et al. Testicular epidermoid cysts: a reevaluation. BMC Urol. 2019 Jun 11;19:52.
山下康行 編. 『知っておきたい泌尿器のCT・MRI 改訂第2版』. 周潤社. 2019年
| Take Home Message |
・層状のエコーパターンかつUSやMRIでの血流の欠如を示す精巣腫瘤は類表皮嚢胞(epidermoid cyst)
参考文献
- 日本泌尿器科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会・日本臨床腫瘍学会 編. 『精巣腫瘍取扱い規約 第4版』. 2018年.
- 山下康行 編. 『知っておきたい泌尿器のCT・MRI 改訂第2版』. 秀潤社. 2019年.
- Jae-Ho Cho et al. Sonographic and MR Imaging Findings of Testicular Epidermoid Cysts. AJR Am J Roentgenol. 2002 Mar;178:743-8.
- Petra Anheuser et al. Testicular epidermoid cysts: a reevaluation. BMC Urol. 2019 Jun 11;19:52.
- Zeev V Maizlin et al. Epidermoid cyst and teratoma of the testis: sonographic and histologic similarities. J Ultrasound Med. 2005 Oct;24:1403-9
|
