第 403 回 東京レントゲンカンファレンス[2023年9月28日]
症例6 30歳代 男性:右下肢に重だるい感じが出現し、徐々に増悪 |
進行性多巣性白質脳症 progressive multifocal leukoencephalopathy |
Progressive multifocal leukoencephalopathy:PML |
PMLは、JCVの再活性化で発症する中枢神経系の脱髄疾患である。主に局所の神経症状を呈し、亜急性進行性の経過を辿る。JCVは乏突起細胞、星細胞のみでなく、大脳皮質や小脳顆粒細胞も侵す. 臨床・画像・髄液・病理所見で診断される. 血液疾患、自己免疫性疾患、HIV感染などの免疫低下者に多い。
画像所見 |
テント上PMLの典型的なMR画像
T2強調像
・前頭葉皮質下白質に高信号、mass effectなし、皮質との境界は明瞭
T1強調像
・低信号(脱髄を反映)
拡散強調像
・部分的な高信号(活動性を反映)(ADC mapは上昇が多い)
造影効果
・ないことが多い
テント下PMLの典型的なMR画像
T2強調像
・小脳歯状核周囲~中小脳脚に三日月状高信号
T1強調像
・低信号(脱髄を反映)
拡散強調像
・部分的な高信号(活動性を反映)(ADC mapは上昇が多い)
造影効果
・ないことが多い
PMLの典型的な病変進展 |
“局所増殖+近隣細胞への感染”
“線維(軸索)に沿った病変進展”
PMLの早期診断の意義
これまでPMLは予後不良な疾患であったが、昨今話題のMS治療薬などに伴う薬剤関連PMLでは薬剤の休薬にて良好な予後も期待できる。
PMLの画像所見は共通し、発症直後から異常がある。
よって放射線科医はPMLの特徴的な画像所見、初期病変を理解することで、早期診断に寄与できる可能性がある。
“PMLの初期病変”
・経血行的に初感染部位に到達、小さな脱髄病変を形成
・punctate pattern (lesions)
ナタリズマブ関連PMLで報告された。
PMLの初期病変はMRIでは皮質下白質の点状病変としてみられる。
punctate pattern (lesions)と呼ばれる。
PMLでみられるその他の所見 |
・病変と接するU-fiberや深部灰白のSWI低信号は、SWI hypointense rimと呼ばれ、PML診断に有用と報告されている。
・慢性のPMLに多いが、症状出現前や発症早期にも生じることもある。
・U-fiberの鉄蓄積、マクロファージ内の鉄蓄積、血液脳関門の破壊および血液産物の漏出、皮質層状壊死などが原因と考えられている。
・ただし、SWI hypointense rimは加齢に伴う生理的変化や脳血管障害や脳炎を含む他疾患でも見られることがあり特異度は高くはない。
・灰白質も侵されることがあり、視床>被殻に多い。
結語 |
PMLは免疫低下患者に多いが、未診断のHIVが背景にあることもある。
典型的な画像所見の他に、SWI hypointense rimが診断の手掛かりになることもある。
発症早期では、特にpunctate lesions を注意深く見る必要がある。
参考文献