カーニー三徴 Carney’s triad |
画像所見 |
胃小弯側のSMT |
右肺下葉に石灰化を伴う結節 |
骨盤内に腫瘤 |
単純MRI(骨盤)
・ T2WI ・T1WI 中等度信号の結節様構造の周囲にT2WI高信号・T1WI低信号の領域が見られる。
結節様構造は拡散制限を伴っている。
造影MRI(骨盤)
・結節様構造は早期濃染・wash outパターンであり、内部に変性は伴っていない。
結節周囲の領域も遅延性に造影効果を認める。
単純MRI T2WI cor
・腫瘤は膀胱壁外、右下方に認められている。
【画像所見まとめ】
@胃壁SMT →GIST, 平滑筋腫/肉腫
A肺の石灰化を伴う結節 →過誤腫
B膀胱壁外のhypervascularな腫瘤 →paraganglioma, castleman disease, 多血性腫瘍の転移, 血管性病変
膀胱壁外腫瘤に対して paragangliomaを疑い、精査
追加検査 |
【血中ホルモン検査】
・カテコールアミン
アドレナリン 61 pg/ml
ノルアドレナリン 435 pg/ml
ドーパミン 69 pg/ml
【(尿検査)】
・VMA尿 3.9 μg/mg
【123I‐MIBG】 |
膀胱右尾側に限局する集積を認める |
診断 |
@胃病変
手術後、GISTの病理診断。
A肺病変
前医から取り寄せたプレパラートを、当院病理部で再度診断したところ、chondromatous hamartoma(軟骨性肺過誤腫)であった。
B骨盤内病変
123I‐MIBGが取り込まれていることから、無症状の paragangliomaと臨床診断された。病理診断は行われていない。
最終診断
Carney’s triad
若年性GIST |
・GIST の約 85%の症例では KIT 遺伝子 (約 75%)
あるいは PDGFRA 遺伝子(約 10%)に機能獲得型の突然変異がみられる。
残る約15%は野生型であり、SDH、Braf、Ras、NF-1などの遺伝子変異がある。
・小児GISTの85%、ならびに成人GISTの10〜15%は野生型GISTである。
・若年性GISTと関連する症候群として、Carney-stratakis症候群、Carney triad、NF1(von Recklinghausen病)などがある。
Carney’s triad |
・肺軟骨腫、GIST、副腎外傍神経節腫の3つのまれな腫瘤を合併する症候群である。SDH欠損GISTに関連性があると言われている。
・3徴候がそろう完全型は、現在まで約100例ほどの報告がある。
・3徴候がそろうには、多年を要することもあるため、2徴候以上を有するものをこの症候群(2徴候は不完全型)として報告されている。
・GISTと副腎外傍神経節腫の場合はCarney-stratakis症候群と称される。
・第1徴候から第2徴候 → 平均8.4年
・第2徴候から第3徴候 → 平均5.9年
・発生頻度
胃GIST 75%
肺軟骨腫 15%
副腎外傍神経節腫 10%
・患者の85%は、女性. 30歳未満で第1徴候を指摘。
・予後は一般に良好
Carneyによると64/79症例が生存中(81%)。
Carneyの別の24症例では
5年生存率:75%
10年生存率:50%
・Carney’s triadの死亡原因は、
悪性GIST
副腎外傍神経節腫
の再発・転移であった。
結語 |
・3徴候がそろった非常にまれな完全型のCarney’s triadの画像を提示した。
・放射線診断にて、 不完全型・完全型Carney’s triad症候群である可能性を提示できれば、
長期のフォローアップが必要であることを、主治医・患者に伝えることができる。
参考文献
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