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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第405回症例 症例:呈示
第 405 回 東京レントゲンカンファレンス[2023年12月21日]
症例3 30歳代 女性
カーニー三徴
Carney’s triad

 

 画像所見
 
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胃小弯側のSMT
 
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右肺下葉に石灰化を伴う結節
 
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骨盤内に腫瘤

単純MRI(骨盤)
・ T2WI ・T1WI 中等度信号の結節様構造の周囲にT2WI高信号・T1WI低信号の領域が見られる。
 結節様構造は拡散制限を伴っている。

造影MRI(骨盤)
・結節様構造は早期濃染・wash outパターンであり、内部に変性は伴っていない。
 結節周囲の領域も遅延性に造影効果を認める。

単純MRI T2WI cor
・腫瘤は膀胱壁外、右下方に認められている。

 

【画像所見まとめ

@胃壁SMT →GIST, 平滑筋腫/肉腫
A肺の石灰化を伴う結節 →過誤腫
B膀胱壁外のhypervascularな腫瘤 →paraganglioma, castleman disease, 多血性腫瘍の転移, 血管性病変

 

膀胱壁外腫瘤に対して paragangliomaを疑い、精査

 追加検査

【血中ホルモン検査】
・カテコールアミン
 アドレナリン 61 pg/ml
 ノルアドレナリン 435 pg/ml
 ドーパミン 69 pg/ml

【(尿検査)】
・VMA尿 3.9 μg/mg

123I‐MIBG】
膀胱右尾側に限局する集積を認める

 

 

 診断

@胃病変
 手術後、GISTの病理診断。

A肺病変
 前医から取り寄せたプレパラートを、当院病理部で再度診断したところ、chondromatous hamartoma(軟骨性肺過誤腫)であった。

B骨盤内病変

123I‐MIBGが取り込まれていることから、無症状の paragangliomaと臨床診断された。病理診断は行われていない。

最終診断
 Carney’s triad

 

 若年性GIST

・GIST の約 85%の症例では KIT 遺伝子 (約 75%)
 あるいは PDGFRA 遺伝子(約 10%)に機能獲得型の突然変異がみられる。
 残る約15%は野生型であり、SDH、Braf、Ras、NF-1などの遺伝子変異がある。

・小児GISTの85%、ならびに成人GISTの10〜15%は野生型GISTである。

・若年性GISTと関連する症候群として、Carney-stratakis症候群、Carney triad、NF1(von Recklinghausen病)などがある。

 

 Carney’s triad

肺軟骨腫、GIST、副腎外傍神経節腫の3つのまれな腫瘤を合併する症候群である。SDH欠損GISTに関連性があると言われている。
・3徴候がそろう完全型は、現在まで約100例ほどの報告がある。
・3徴候がそろうには、多年を要することもあるため、2徴候以上を有するものをこの症候群(2徴候は不完全型)として報告されている。
・GISTと副腎外傍神経節腫の場合はCarney-stratakis症候群と称される。

・第1徴候から第2徴候 → 平均8.4年
・第2徴候から第3徴候 → 平均5.9年

・発生頻度
 胃GIST 75%
 肺軟骨腫 15%
 副腎外傍神経節腫 10%

・患者の85%は、女性. 30歳未満で第1徴候を指摘。

予後は一般に良好
 Carneyによると64/79症例が生存中(81%)。
 Carneyの別の24症例では
   5年生存率:75%
   10年生存率:50%

・Carney’s triadの死亡原因は、
 悪性GIST
 副腎外傍神経節腫
  の再発・転移であった。

 

  結語

・3徴候がそろった非常にまれな完全型のCarney’s triadの画像を提示した。
・放射線診断にて、 不完全型・完全型Carney’s triad症候群である可能性を提示できれば、
 長期のフォローアップが必要であることを、主治医・患者に伝えることができる。

 

 


参考文献

  • 坪井光弘 他:不完全型Carney’s triadの1例 ─本邦報告11例の臨床的検討─ 日呼外会誌 26巻1号79−84 (2012年1月)
  • J. Aidan Carney: The Triad of Gastric Leiomyosarcoma, Functioning Extra-Adrenal Paraganglioma and Pulmonary Chondroma, N Engl J Med 1977; 296:1517-1518
  • 柳田正志 他:不完全型Carney‘s triadの一例, 日呼外会誌17巻1号 (2003年1月)
  • 臨床放射線 Vol61 No.11 1407, 2016
  • 川村光夫 他:多発性肺過誤腫と胃平滑筋肉腫を合併したCarney‘s triadの1例 日呼外会誌 第8巻2号190‐195(1994年 3 月)
  • Carney JA : The triad of gastric epitheloid leiomyosarcoma, pulmonary chondroma and functioning extra-adrenal paraganglioma : A five-year review. Medicine 62 : 159-169, 1983.

   
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