左肺動脈起始異常 完全気管軟骨輪に伴う気管狭窄 Pulmonary artery sling with complete tracheal rings and tracheal stenosis |
正常との比較 |
気管分岐部が低く、分岐角度が広がっている所見をLow inverted T- shaped carinaといいます。 |
鑑別 |
形成異常に伴う気管狭窄
・
完全気管軟骨輪
外部からの圧迫
・左肺動脈右肺動脈起始
・血管輪 (重複大動脈弓など)
・縦隔腫瘍
他
・感染や気管支喘息を契機とした粘膜肥厚 など
画像 |
造影CT |
縦隔CT | ||
矢印で示しているのが左肺動脈です。 気管の背側、食道の腹側を通って左肺へ向かっていることがわかります。 |
●所見まとめ
【単純写真】
・Low inverted T-shaped carina
【造影CT】
・気管の横断像が馬蹄型ではなく類円形
・左肺動脈が右肺動脈から分岐し、気管の背側・食道の腹側を通って左へ走行
最終診断
左肺動脈右肺動脈起始+ 完全気管軟骨輪による先天性気管狭窄
Ring-Sling complex
完全気管軟骨輪(先天性気管狭窄) |
気管背側の膜様構造が欠損し、完全気管軟骨輪となることで狭窄所見を呈する疾患
70−80%程度に何らかの合併奇形あり
・ 気管食道瘻
・ 肺低形成/無形成
・ 左肺動脈右肺動脈起始 type2
・ 気管支狭窄 など
左肺動脈右肺動脈起始 PA-sling |
左肺動脈が右肺動脈から起始し
気管の右背側から気管を取り巻くように食道の腹側を走行して左肺へ向かう
・Type1 : 約1/3
気道の狭窄がなく、分岐の位置も正常
・Type2 : 約2/3
気道の圧排や軟骨輪による気管狭窄を合併
新 先天性心疾患を理解するための臨床心臓発生学 メジカルビュー社 2021より
本症例のポイント |
左肺動脈右肺動脈起始+ 完全気管軟骨輪による先天性気管狭窄
→ Ring-Sling complex
Ring-Sling complexの治療 |
@Slingの解除
左肺動脈移植術
ARingの解除
狭窄部切除+端端吻合 or スライド気管形成術
通常は @ と A を同時に行う
Take home message |
@喘鳴などを契機に撮影された単純写真
気管・気管支の狭小化だけでなく
分岐異常、分岐角開大の有無も忘れずに確認しましょう
ACTでPA slingを指摘して終了ではない
気管狭窄の評価も忘れずに行いましょう
参考文献
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