●症例 1 10歳代 男性

本例では、転移を含めたリンパ節腫大やneurogenic tumor等の悪性腫瘍を否定できず、腫瘍摘出術が施行されました。

病理標本

病理標本 表面 表面

病理標本 割面 割面

●組織診断:Granulomatous lymphadenitis, (abscess-forming)
術中tumorの一部が破れitel様の黄色液体が流出したが、細菌検査は、塗抹染色ではグラム陰性・陽性菌、真菌のいずれも陰性であり、嫌気性培養でも陰性でした。Walthin-Starry銀染色等は行われていません。

生活歴を聴取すると、家庭で猫を飼っていることが分かりました。
本例の腋窩リンパ節腫大は感染症であるCat-scratch disease(CSD)でした。

考察
CSDは、Rochalimaea henselaeとAfipia felisというproteobactriaが原因の、猫の掻き傷または猫との接触と関係する、良性の所属リンパ節の有痛性腫脹を起こす人畜共通感染症です。
CSDは世界中で見られる疾患で、60-70%は5歳から21歳の若年者に見られます。
感染経路は良く分かっていないが、猫との接触が93%に及ぶと報告されています。
犬との接触が感染源と思われる例も少数だが報告されています。
接触から3日から10日で感染した部位に紅斑等の初発症状が現れ、3-4週後に有痛性のリンパ節腫大が現れます。
好発部位は肘内側の滑車上部リンパ節や腋窩リンパ節、頭頚部リンパ節、鼡径リンパ節等で、リンパ節腫大は単発性のことが44-85%です。
治療は抗生剤の投与(cephamycin、gentamicin)ですが、投与せずとも3週間前後、長くても半年以内で自然消退する場合がほとんどです。
鑑別診断は前記にあげた通りですが、neoplasmaや外傷と間違われ手術を受けることも多く、CSDが疑われたらCT、MRIや血清学的検査が役立ちます。
CSDの画像所見は、著明に腫大したリンパ節が見られ、リンパ節の辺縁が不鮮明なことがあり、リンパ節周囲に強いedemaが見られることが多く、リンパ節より遠位にedemaが強いです。
CTではリンパ節は混合信号の軟部組織陰影で、内部に壊死と思われる低吸収域が見られ、周囲にedemaが見られます。MRIでも同様の所見が認められます。
若年者の上腕や腋窩、頭頚部のリンパ節腫大が見られた場合はCSDを鑑別に考え生活歴を聴取する必要があると思われます。

参考文献
Dong PR, et al. Uncomplicated Cat-Scratch Disease:
Findings at CT, MR Imaging, and Radiography. Radiology 1995;195:837-839

●鑑別診断へ戻る
●症例提示ページへ戻る



●第239回レントゲンカンファレンスのページへ戻る
●東京レントゲンカンファレンス日程表掲載のページへ戻る