症例1 30歳代 男性

診断:副腎白質ジストロフィー

入院後経過:
当初OPCAの可能性が疑われたが、
MRI所見:小脳虫部および小脳半球上の萎縮を認め、
部両側歯状核-赤核-視床路に一致してT2延長域あり。

ACTH不応症の既往から副腎白質ジストロフィーを疑い、
極長鎖脂肪酸の異常高値を検出→診断
C24:0/C22:0 1.748(0.628−0.977)
C25:0/C22:0 0.060(0.012-0.023)
C26:0/C22:0 0.028(0.003-0.006)

副腎白質ジストロフィー(AdrenoLeukoDystrophy)
ペルオキシゾーム異状症のひとつ。
 X染色体上の遺伝子突然変異による伴性劣性疾患。
 very long chain acyl-CoA synthetase(極長鎖脂肪酸をペルオキシゾームに輸送する蛋白)の活性低下が原因。頻度1/2万人。
 副腎皮質、精巣、中枢神経の髄鞘などの全身臓器に分解が阻害された極長鎖脂肪酸が蓄積する。
確定診断:極長鎖脂肪酸の異状高値検出
分類:Childhood cereberal form(CCALD)
5〜9才で異常行動、視力・聴力障害、痙性運動麻痺で発症 
全体の30〜50% 
 adrenmyeloneuropathy(AMN)
30〜40才で発症 CCALDに次いで多い 脳内病変は10%
 adolescent cerebral form(AdolCALD)
症状と経過はCCALDと同じ
 adult cerebral form(ACALD)
成人発症
 adult Addison-only form
内分泌症状が主

MRI所見:
脱髄、炎症所見を反映し、脳梁膨大部→側脳室三角部周囲白質→皮質脊髄路に左右対称性に脱髄が起こる。脱髄は融合病変として外側、前方に広がり、次第に大脳半球全体に及ぶ。皮質下は末期まで保たれる。
病理的に特徴的な3層構造(outer zone/middle zone/large central area)に別れ、信号変化や造影効果は組織像の層構造に一致する。

MRI所見
outer zone   信号変化は軽度 造影効果なし
middle zone       造影増強効果を示す(特徴的)
large central area   T2高信号 T1低信号 

繊維に沿ってwaller変性を反映したT2高信号が見られる事がある。
病変が偏側性、前頭葉優位といった非典型例も存在する。

Pattern
 1 後頭登頭頂葉白質・脳梁膨大部
 2 前頭葉白質・脳梁膝部
 3 皮質脊髄路     →成人 緩徐進行
 4 皮質脊髄路と小脳白質     →10代発症 緩徐進行
 5 前頭葉白質・後頭頭頂葉白質が同時に障害 →小児期で特に急速進行

鑑別:
 periventricular leukodystrophy,neonatal hypoglycemia,
 Alexander病,terminal zone 等

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moderator :舘野 展之


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