症例 5:ある疾患で経過観察されていた男児

診断
嚢胞(性)線維症:cystic fibrosis;CF
粘液粘稠症:mucoviscidosis
・外分泌腺での粘稠物質の貯留により呼吸器、消化器などの障害を呈する、常染色体劣性遺伝疾患。主徴は膵外分泌障害、慢性呼吸器疾患、汗電解質異常。
・人種差:西洋人 分娩2500人に1人
     アフリカ 17000人に1人
     アジア きわめて稀
・遺伝子:7番長腕(7q31.2)のCFTR(cystic fibrosis transmembrane conductance regulator protein)遺伝子の欠失
細胞膜でのCl輸送障害
・ほとんどはΔF508mutation(homozygoteまたはheterozygote)のため産生蛋白(chloride channel)の中の phenylalanineが一つ欠損
・cAMP活性が欠如
・腺上皮でのCl−のイオン輸送が障害される
・同時にNaとH2Oの輸送が障害され、分泌腺排泄物の粘稠度が高くなる。
・汗腺ではCl−の再吸収障害のため汗Cl≧60mEq/ml
病態1;消化管閉塞
・Meconium ileus
・Meconium plaq syndrome
・Distal intestinal obstruction syndrome
・Intussusception
・Fibrosing colonopathy
胎便性イレウス
・遠位小腸の粘稠便の貯留による閉塞。遠位大腸は小さい(microcolon)。腹部膨満、胆汁性嘔吐、生後48時間以内の排便なし。
・合併症:腸管虚血、捻転、腸管穿孔、胎便性腹膜炎
・出生前;羊水過多、小腸拡張
・CFの10〜15%に見られる。胎便性イレウスの患児のほとんどはCF。
腸重積
・欧米では重積の1%
・幼児期・学童期に好発。(一般の重積は3歳未満に好発)
・通常はileo-colic intussusception。残便の付着、遠位小腸のリンパ濾胞の腫大、腫大虫垂(平均 8.3 mm)が誘因
・診断と治療;注腸造影 
    使用する造影剤は?ガストログラフィンvs非イオン性造影剤

病態2:膵外分泌障害
・30歳未満の膵外分泌障害のうち最多。
・粘調な膵外分泌液による膵管閉塞。
・腺房萎縮、脂肪沈着、線維化、膵管拡張、石灰化
・消化吸収不良、脂肪便
・2次的な膵内分泌障害

病態3;肝胆道
・肝臓への脂肪沈着、胆道閉塞、肝硬変・門脈亢進
・肝障害による肺障害;hepatopulmonary syndrome

病態4;呼吸器障害
・死因の90%
・反復性呼吸器感染症、気管支拡張症
・肺の線維化、嚢胞状気管支拡張
・各種の保存的治療で平均寿命が30年近くまで延長
・最終的には肺移植 将来は遺伝子治療?

CT findings
・Bronchiectasis
・peribronchial wall thickening
・mucous plugging
・abscesses
・Bullae
・Emphysema
・Mosaic perfusion
・collapse or consolidation

その他
・消化性潰瘍
・消化器悪性腫瘍
・副鼻腔炎

参考文献
・Radiographics 16;871-893,1996.
・Radiology 213;537-544,1999.

 
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moderator :信澤 宏


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