症例 8:50歳代 女性

診断

・右卵巣の検体は単房性嚢胞性腫瘍で,嚢胞内に乳頭状隆起を示す充実部を認める.
 充実部では,組織学的には豊富な粘液を有する異型円柱上皮細胞が乳頭状に増生している.
 明らかな間質浸潤(-) .また嚢胞の一部ではendometrial cystの所見も見られる.

病理

嚢胞壁から乳頭状充実部の弱拡像。
上皮の乳頭状増生を認める。
間質は浮腫状で、上皮を囲むように粘液が認められる。

強拡像。
左:内膜症の部分
右:豊富な粘液を有する
異型円柱上皮細胞がみられる部分

考察
<一般的事項>
・内膜症性嚢胞から腫瘍が発生することがある。
 画像的には内膜症性嚢胞に合併した造影される壁在結節として現れる。
・卵巣の内膜症性嚢胞の悪性化は0.7%。明細胞腺癌、類内膜腺癌が多い。
・Endocervical typeのmucinous borderline tumor、mucinous cystadenoma,
 adenofibromaなども発生する。→画像で、癌との鑑別が問題


嚢胞内の壁在結節が、豊富な粘液と間質の浮腫を反映して、T2WIできわめて高信号を呈するとの報告がある。また、内膜症性嚢胞に発生したcystadenofibromaでも同様に壁在結節がT2WIできわめて高信号を呈することがあると報告されている。
嚢胞内の壁在結節のT2WIの信号がこのような特徴を有した際は、癌以外の良性〜境界悪性腫瘍の合併の可能性がある。

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Moderator:野村 あやの

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