症例 1:10歳代 女性

最終診断

PTP(press through package) による直腸穿孔
Rectal perforation caused by a press through package

PTP(press through package)
・1960年代から導入され、広く普及している薬剤の包装形態。プラスチックのケースに薬剤を容れ、アルミフィルムなどで封入している。(「blister-wrapped tablet」とも)
・鋭く硬い辺縁を持ち、誤嚥した場合、消化管穿孔を来す危険がある。



PTP誤嚥
・大半は生理的狭窄を有する食道に引っかかるため、食道穿孔が多い。食道異物の約10%と言われる。
・PTPの普及に伴い、小腸・大腸の穿孔の報告も少ないながら見られる。本邦における、PTPによる下部消化管穿孔の報告は18例であり、平均年齢80才、S状結腸9例、直腸6例であった。(森田ら、日臨外会誌 67(3)、683-686 2006)
・小腸では、やはり生理的狭窄部位である回腸末端での穿孔が多い。
・薬を内服している患者の1〜5%が、PTPを誤って口腔内に入れた事がある、という報告がある。特に認知力や口腔機能が低下している高齢者で起こりやすく、本人および周囲に誤嚥の認識が無い場合もある。
・家族や医療者による内服管理、シートに折り目がついていない(個別に切り離せない)、ODP(one dose package:一回内服分を一包として処方)などが誤嚥を予防するために行われている。
・CTにおいて、PTPは線状高濃度(アルミフィルム)として描出される。また、未開封の場合は内部の空気濃度(ケース内部の空気)、高濃度(薬剤)からなる、三層のtarget状の構造が特徴的である。
・ただし、ほぼX線透過性の小さな構造物であるため、術前の画像診断は困難な場合が多い。特に周囲に空気がある場合や結腸では同定困難と言われる。
・MDCT(Multi-detector CT)で得られるスライス厚の薄い画像や、これから再構成されるMPR画像・3D画像は、PTPを含めた消化管異物の同定に有用であると思われる。

まとめ
・PTP誤嚥による直腸穿孔を経験した。
・消化管穿孔の疑われる症例、特に高齢者では、誤嚥の経過がはっきりしない場合でも異物の可能性を考え、薄いスライス厚のCTで詳細な評価を加える事が重要であると思われた。

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Moderator:戸田 一真

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