家族性大腸腺腫症
・臨床的定義 大腸におよそ100個以上の腺腫を発生する疾患(大腸癌取扱い規約)
家族暦の有無に関わらなくても構わない(日本臨床 消化管症候群:120-123)
・最も根本的な定義は5番染色体長腕に位置するAPC遺伝子の変異による優性遺伝であるが、
実用上臨床的定義で十分。(日本臨床 消化管症候群:120-123)
・頻度 1/15000 性差なし
・常染色体優性遺伝
・日本のFAPでは
大腸癌診断 39.8歳
死亡年齢 42.8歳(死因は81%大腸癌)
・APC遺伝子の発生異常のある人では
平均15.2歳でpolyposisの診断
30.8歳で大腸癌 32.6歳で癌死
・大腸癌の発生率
40歳までに50%,60歳までに90%
大腸の予防的切除が適応になる
家族性大腸腺腫症の他病変
・胃(FAPの60%):胃底腺過形成性ポリープ(48%)、腺腫(38%)、癌(7%)
胃癌発生率(一般の3.6倍)
・十二指腸:腺腫(88%),癌
十二指腸小腸癌発生率(一般の380倍)
・回腸空腸病変:腺腫
・軟部腫瘍:線維腫、類表皮腫、desmoid(FAP手術後8%)
・網膜色素上皮肥大(FAPの55%)
・甲状腺癌(FAPの8%): 乳頭癌(一般の100倍)
cribriform variant carcinomaが特徴的
・骨腫(FAPの80%):下顎好発
・その他:膵癌、肝細胞芽腫、副腎腺腫瘍、脳腫瘍
大腸病変
・ポリープの分布は小型(5mm以下)の無茎性ポリープが均一に分布することが多い
・発赤した亜有茎性隆起
・S状結腸では有茎性病変がおこることがある
治療
・全結腸直腸切除、回腸ストーマ
・全結腸直腸切除直腸肛門吻合:肛門機能温存
・全結腸切除:直腸を残す
大腸癌を発生しやすい疾患
・遺伝性消化管ポリポーシス
家族性大腸腺腫症:Gardner症候群を含む
Turcot症候群
Peutz-Jeghers 症候群
若年性ポリポーシス
Cowden病
・遺伝性非ポリポーシス性大腸癌(HNPCC)
家族性大腸腺腫の亜型
・Gardner症候群
外骨腫、体表の軟部腫瘍FAPとの間に遺伝子変化の差はない
・Attenuated familial adenoumatous polyposis
右側結腸中心に100個以下の小さな腺腫、大腸癌の発生は遅い
Peutz-Jergers症候群
・過誤腫性ポリポーシス
・斑点状色素沈着
・常染色体優性遺伝
・ポリープは数個から数百個
・ポリープは大小不動(FAPは均一)
・有茎性が多い 分葉状
・小腸ポリープは腸重積おこしやすい
・悪性化の危険は高くない
若年性ポリポーシス
・過誤腫性ポリポーシス
・ポリープの数は数個から数十個散在
・遺伝があるものとないもの
・先天奇形
・直腸に多い
・平滑な隆起、発赤
Cowden病
・顔面多発丘疹
・四肢の角化性丘疹
・口腔粘膜の乳頭腫症
・消化管ポリポーシス
・多臓器の過誤腫、過形成、腫瘍
乳癌、甲状腺癌、卵巣癌、消化管癌
・遺伝あり PTEN遺伝子
・食道のび慢性ポリポーシスは特徴(鑑別になる)
Cronkhite Canada症候群
・消化管ポリポーシス
・脱毛
・爪甲の萎縮
・全身色素沈着
・遺伝なし
・癌化しないが蛋白漏出性胃腸症をおこす
Turcot 症候群
・常染色体劣性遺伝
APC遺伝子、ミスマッチ修復遺伝子
・脳腫瘍(glioma系の合併)
FAPも脳腫瘍発生することあるが髄芽腫が多い
・大腸腺腫の数は少ない(20〜200個)
・ポリープは大きく3cm以上のものが多い
・大腸全摘必要