例1 60歳代 男性

経過

2週間後CTにて輸入脚穿孔と診断され、緊急手術を施行された。輸入脚症候群の破裂による腹膜炎と確認され、輸入脚空腸部分切除、洗浄ドレーナージを施行した。


手術所見および摘出標本のスケッチ

診断
腸石による輸入脚症候群・急性膵炎および輸入脚穿孔

腸石

仮性結石:他の器官で形成されたものが腸まで移動(胃石、胆石)
真性結石:正常の腸液を主成分として腸の中で形成(胆汁性結石、カルシウム塩腸石)

輸入脚症候群

胃切除後、輸入脚を有する再建(billroth II法、Roux-en Y法)後に、胆汁や膵液の貯留により輸入脚の内圧が上昇し、径が拡張、腹痛、腹部膨満、嘔吐などの症状を呈する。十二指腸内圧の上昇により胆汁鬱滞や膵炎を引き起こすこともある。原因として、癒着、屈曲、吻合部狭窄・潰瘍、癌再発、内ヘルニア、重積がある。

幽門側胃切除術と腸石

落下胃石による腸閉塞の報告はまれ。腸管穿孔の報告はさらにまれ。
Billroth II 法再建例では、上部消化管の細菌数が増加し、胆汁酸の増加をもたらす。また、blind loopと化した輸入脚や手術により運動機能の低下した十二指腸が腸内容の停滞を招き結石形成に関与する可能性もある。

参考文献

  • 境他:落下胃石により回腸閉塞・穿孔を来した1例.日消外会誌39(1):94-99,2006
  • 輸入脚空腸憩室穿孔に随伴した腸結石の1例.日消外会誌36(11):1575-1580,2003
  • 森田他:幽門保存胃切除後に発生した胃石による腸閉塞の1例. 日消外会誌33(11):1799-1801,2000
  • Carbognin,et.al.Afferent loop syndrome presenting as enterolith after Billroth II subtotal gastrectomy: a case report. Abd. Imaging 25:129-131,2000
・症例提示へ

Moderator : 倉田 彰子