症例7 30歳代 男性

dynamicCT所見

  • 両側肺動脈主幹末梢部中心に複数の肺葉枝に多発するdefect
  • 右腎実質に造影後早期動脈相にて区域性の複数の造影不良域

CTからの診断

  • Pulmonary embolism
  • Rt. Renal infarction
発症16時間後dynamicCT   US (下肢静脈)左膝窩静脈
 
         

肺塞栓症および深部静脈血栓症と急性腎梗塞の関連性は?

左心系に血栓なし
 〜右-左シャント?

     
経食道心エコー (Color Doppler)   経食道エコー (bubble contrast)
 

診断 Impending Paradoxical embolism

  • PEなどの肺動脈圧上昇に伴い、静脈系の血栓が右?左シャントを介して体循環系に飛散し、動脈塞栓をきたす病態。
  • 卵円孔開存(正常人の約30-35%にみられる)で多くみられる。
  • 動脈塞栓のうち2%未満と頻度は比較的稀。
  • 若年患者の原因不明の急性動脈塞栓に関連。


Paradoxical embolismの診断

  1. DVTあるいはPEの存在
  2. 静脈系と体循環系の異常交通路
  3. 画像を含む臨床、血管造影、病理などで体循環系の塞栓が証明されている
  4. 右-左シャントをきたし得る圧勾配の存在
  5. 左心系に塞栓物質がない
       〜疑診

上記2.に血栓が付着している場合、確診としても良いと思われる


結語

  • PEのPtに動脈系の塞栓の合併がある場合は、Impending Paradoxical embolismが考えられ、右左シャントの存在を積極的に疑う必要がある。
  • 卵円孔開存などでの右左シャントの確認に経食道エコー、特に造影エコーが有用である。
  • 急性期梗塞の原因が不明の場合、静脈系の血栓や右左シャントの検索が必要と思われる。
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Moderator : 森  徹