症例1 60歳代 女性

主 訴:呼吸苦、動悸
現病歴:

乳癌の手術予定だったが、咳嗽、喀痰出現したため中止となった。抗生剤内服するも症状改善なく労作時呼吸苦、動悸出現。呼吸苦増強したため、当院へ救急搬送となった。

既往歴:高血圧、高脂血症、アレルギー:なし
喫煙歴:なし、飲酒歴:機会飲酒
家族歴:父 肝臓癌、母 糖尿病

身体所見

身長 146cm、体重 55kg
BT 36.3℃、BP 131/101、HR 102
SpO2 94%(酸素マスク6L)
胸部:心雑音なし、呼吸音 清、ばち指なし
その他特記すべき身体異常所見なし

検査所見

動脈血ガス (酸素6L)
PO2 71.9 Torr、PCO2 23.9 Torr、 PH 7.46  HCO3 16.7mmol/L、Base Excess -5.6mmol/L SaO2 94.8%

心電図:SR、HR 110/min、II、III、aVF、V1-5 T波陰性化

心エコー:前側壁軽度運動低下、右室拡大、右房拡大、軽度のTR、右室圧上昇(推定RVSP 50mmHg)

<入院後経過>

  • 心電図、心エコーの結果,心筋逸脱酵素上昇 からACSが疑われ、緊急カテーテル検査施行。Coronaryはnormal、CI 1.85L/m2、PCW 11mmHg、PA 50/20mmHg。右肺動脈の拡張所見を認めた。
  • 肺動脈血栓塞栓症を疑い、すぐさま胸部造影CT及び肺血流シンチグラフィーを施行した。

<その後の経過>

  • ○月5日 肺動脈血栓塞栓症が疑われ、CCUに入院。抗凝固療法を開始したが、その後も咳症状は軽度増悪、酸素マスク6Lにて呼吸状態は横ばいだった。
  • ○月12日 呼吸状態はさらに悪化。再度胸部CT撮影。

提示画像(画像をクリックすると拡大された画像がみられます)

胸部CT ○月5日


 

胸部CT(○月5日)


 

 

肺血流シンチ(○月5日)

胸部CT(○月12日)


 

 

胸部CT(○月5日)

  • 右側乳腺に辺縁不整な結節影、右腋窩リンパ節腫大。
  • 右室及び肺動脈の拡大。肺動脈に明らかな血栓は認めない。
  • 両側肺野、肺底部優位に、気管分枝周囲のすりガラス状濃度上昇、粒状影が多発。

肺血流シンチ(○月5日)

  • 右肺S1や左肺S3に楔状の血流低下域を認める。その他にも区域よりも小さな血流欠損域が多発している。
  • 正面像にて左右の血流比はR:L=57:43。

胸部CT(○月12日)

  • 5日の胸部CTと比較して、肺野全体に粒状影が広がり、肺底部優位に、気管分枝周囲のすりガラス影は増強している。
  • 肺野末梢に楔状影が新たに出現している。
 
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Moderator : 赤井 宏行