第312回 東京レントゲンカンファレンス
2009年4月23日

症例3 10歳代(後半) 男性

 

    膵充実性偽乳頭状腫瘍
  solid-pseudopapillary tumor(SPT)of pancreas

 

本症例の画像所見のまとめ
被膜をもつ膵体部腫瘤(大きさ約5cm)
 ・明らかな増強効果を示さない嚢胞成分と,増強効果の漸増する充実成分が混在
 ・嚢胞成分は出血性らしい
      単純CT で軟部濃度〜軽度高濃度
      MRI T1 強調画像で高信号,T2 強調画像で低信号
尾側の膵実質の萎縮・脂肪置換・膵管拡張

 

膵SPT:一般的事項
過去の名称がいろいろあり
 ・solid and cystic tumor, solid and papillary (epithelial) neoplasm, papillary-cystic neoplasm, ...
現在は solid-pseudopapillary tumor に統一
膵腺房細胞由来と考えられている
20〜30代の若年女性(とくに東洋人・黒人)に多いとされるが,本症例のように10%程度は男性にも発生,
  高齢者の報告もあり
 ・国内報告302例のまとめ*では,男性40例(13.2%)    *吉岡正智ら,胆と膵 22: 45-52, 2001.
大部分は良性だが,転移・再発の報告もあり (solid-pseudopapillary carcinoma: SPC)
本来は充実性腫瘍だが,時間の経過により出血・壊死・石灰化などの退行性変化が起こる
 ・嚢胞成分充実成分との混在が特徴的
 ・壁の石灰化の頻度も高い
症状:腹痛,腹部のしこりなど
治療:手術が基本,完全摘出で根治が期待

膵SPT:画像所見
膵実質から突出する大きな腫瘤
被膜を有し,充実成分嚢胞成分からなる
嚢胞成分に出血・壊死
壁にはしばしば石灰化
SPCと良性SPTの鑑別*
 ・膵管拡張,血管浸潤,転移など
 ・大きさ,局在,成分,石灰化には有意差なし      *Lee et al. Clinical Radiology 63: 1006-1014, 2008.

膵SPT:鑑別疾患
嚢胞成分が主体
 ・仮性嚢胞
 ・粘液性嚢胞性腫瘍(MCT)
 ・嚢胞性内分泌腫瘍
充実成分 が主体
 ・腺房細胞癌
 ・内分泌腫瘍
 ・(小児の場合)膵芽腫



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Moderator: 山田 晴耕