東京レントゲンカンファレンス TOP 症例一覧第313回症例症例8:呈示 ≫ 症例8:診断と解説
第313回東京レントゲンカンファレンス
2009年5月28日
症例8 60歳代 男性 
   

前立腺平滑筋腫
Prostatic leiomyoma

 

画像所見
1.骨盤内に比較的明瞭で大きな腫瘤
  前立腺上辺縁より突出している(正常前立腺が残存圧排)。
  精のうは不明。
     →前立腺由来?

2.T2WIにて高低信号混在
  血性の嚢胞様構造含む
  造影効果は不均一

鑑別診断
1.前立腺腫瘍
   carcinoma, leiomyoma, leiomyosarcoma
2.精嚢腫瘍
adenocarcinoma, sarcoma
(3.その他   GISTなど)

大きい割に境界明瞭であることを考慮すると、carcinomaとしては非典型的
 前立腺または精嚢原発疑い

CTガイド下生検

病理組織診断
・Leiomyoma, most likely
・小型の類円形核と好酸性の強い短紡錘形・波型あるいは多少epithelioidな胞体を有する小型細胞が、
  時に密あるいはhaphazardに配列。豊富に存在し、腫瘍成分と判断。
・腫瘍成分は異型のない前立腺腺管と接しており、前立腺内に存在することが知れる。
・明らかに悪性とすべき壊死・顕著な核異型・核分裂等を欠く

前立腺平滑筋腫
・前立腺腺組織周囲の平滑筋組織、前立腺被膜、ミュラー管の遺残 を由来とすると考えられている(Kaufman)
   →前立腺辺縁に発生する
・感染や炎症によって腺組織が平滑筋組織へと置換され、その肥大が平滑筋腫に至る(Vassilakis)
・臨床的主症状は尿閉。症状が非常に強い場合には手術。
・術後再発の報告はない。
・画像所見に関する文献は少ない(5件程度)が、それをまとめると
・境界明瞭
・小さいものでは内部均一なことが多いが、大きなものでは内部不均一となる。
   →壊死や変性などによる影響と推測。
・前立腺の辺縁に存在し、正常前立腺を圧排する
・(子宮など他の平滑筋腫の所見とも共通する印象がある)

 

 

≪≪症例呈示へ戻る
Moderator:笠井ルミ子、森田英夫、北村範子、粕谷秀輔、工藤秀康、中塚智也、長谷部光泉、寺田一志