腹膜リンパ腫症 |
血液生化学的所見:
WBC、LDH、CRP上昇、sIL-2R異常高値
画像所見 | ||
CT | ・両側鎖骨上リンパ節腫大 | |
・大網や腸間膜の脂肪織混濁、不整な結節、腫瘍状の軟部濃度 | ||
・傍大動脈リンパ節腫大 | ||
・中等量の腹水貯留 | ||
Gaシンチ | ・腹部全域に著しい集積 |
鑑別疾患
・悪性リンパ腫(peritoneal lymphomatosis)
・癌性腹膜炎
・結核性腹膜炎
血液生化学的所見および画像所見から癌性腹膜炎、悪性リンパ腫が疑われ、精査入院。
・左鎖骨上腫大リンパ節より生検。
・入院後、体幹部および四肢に発赤を伴った皮疹が出現したため、皮疹より生検。
・消化管スクリーニング目的にGIF施行。Fornixの多数の不整発赤小隆起、体上部の発赤陥凹より生検。
・左鎖骨上腫大リンパ節→Maligant lymphoma
免疫染色によりDiffuse large B cell lymphoma
・皮疹および胃の発赤隆起病変からはatypical lymphocytic infiltrationのみ。
・臨床病気IVE
・Hyper-CVAD(エンドキサン、アドリアマイシン、オンコビン、デカドロン)にて化学療法導入。
その後、R-CODOX-M/R-IVACを1コース施行。
単純CT(施行後) |
腫大していた両側鎖骨上リンパ節は同定できない程度に縮小 |
腹水は消失しており大網の混濁も改善 |
大網や腸間膜内に認められていた不整な結節、腫瘤状の軟部濃度は改善。 小腸にわずかに癒着性変化が見られる。 腫大した傍大動脈リンパ節も消失。 |
同様の改善が見られる。 |
Peritoneal lymphomatosis
・非ホジキンリンパ腫の初発形式として、腹水を伴い腹膜、
大網にびまん性に腫瘍浸潤を認めることが稀にあり、peritoneal lymphomatosisと呼ばれる1)2)。
・NHL400例を解析した報告では腹膜播種は4例、大網病変は3例に認められ、頻度は1.75%、初発例に限ると0.75%であった3)。
・NHLで死亡した322人の病理解剖結果を検討した研究では、
漿膜や大網浸潤を64人(20%)に認めたと報告されており、再発、進行したNHL症例においては頻度は増加する4)。
・病理組織学的にはaggresiveな組織亜型のことが多い5)。
・Peritoneal lymphomatosisのうち約半数がAIDS患者であったとの報告がある1)。
・胃、回腸末端原発が多い2)3)。
CT所見
・腹水貯留 ・少量〜中等量
・被包化や隔壁構造(−)
・大網や腸間膜脂肪織へのびまん性浸潤
・omental cakeの形成
・smudged appearance
・stellate appearance
・腹腔内、後腹膜のびまん性リンパ節腫大
特異的な所見はなく、Peritoneal lymphomatosisを癌性腹膜炎など他のびまん性腹腔内は種病変と鑑別することは難しい。
CTにて癌性腹膜炎のようなびまん性に腹膜や大網播種をきたす所見が見られた時に、頻度は稀ながらPeritoneal lymphomatosisも鑑別に挙げることが必要。
参考文献
1)Lynch MA et al:CT of perotoneal lymphomatosis.AM J Roentgenol 151:731-715,1988
2)Kim YS et al:Peritoneal lymphomatosis:CT findings.Abdom Imaging 23:87-90,1998
3)Harvey S et al:Non-Hodgkin lymphoma:Computed tomographic demonstration of unusual extranodal involvment.Radiology 149:211-217,1983
4)Enrkich A at al:Gastrointestinal manifestations of malignant lymphoma.
Gastroenterology 54:1115-1121,1968
5)Horger M et al:Extensive peritoneal and omental lymphomatosis with raised CA 125 mimicking carcinomatosis:CT and intraoperative findings.Br J Radiol 77:71-73,2004
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