急性消化管GVHD |
経過
感染性腸炎を疑い抗生剤を投与したが、症状は改善せず。
CT検査の4日後、前胸部に淡い紅斑出現し、その後、顔面、頚部、手掌に紅斑が拡大。
T-bilはCT検査前から軽度の上昇傾向を続けていた(最高2.9) 。
またサイトメガロウイルス抗原、β-Dグルカンともに陰性であった。
以上よりGVHDを疑い、ステロイド投与(PSL 1mg/Kg)を開始。
ステロイド投与後、下痢、皮疹ともに軽快し、T-bilは正常化した。
内視鏡検査による組織採取は行われなかったが、ステロイドにより症状が改善したことより、急性GVHDと診断した。
Graft-Versus-Host Disease(GVHD) 移植片対宿主病
造血幹細胞移植後ドナーリンパ球が引き起こす組織障害
急性GVHD:移植から100日以内に発症
骨髄移植例の10〜70%に発症
皮膚、肝、消化管が標的臓器
臓器障害のstage | |||
皮膚 |
肝 |
消化管 |
|
stage |
皮疹(%) |
T.bil(mg/dl) |
下痢(ml/day) |
1 |
<25 |
2.0-2.9 |
500-1000・持続する嘔気 |
2 |
25-50 |
3.0-5.9 |
1000-1500 |
3 |
>50 |
6.0-14.9 |
>1500 |
4 |
全身性紅斑 |
>15 |
高度の腹痛・出血、腸閉塞 |
急性消化管GVHD
骨髄移植例の30〜60%に発症
内視鏡所見
部位 上部:胃>十二指腸>食道
下部:右側結腸>終末回腸>直腸>左側結腸>横行結腸
所見:粘膜浮腫、斑状発赤、潰瘍、出血、広範囲の粘膜脱落
胃と腸 2005, 40(7)1172-1184
CT所見(消化管GVHD 22症例の検討)
・小腸壁肥厚(>3mm) 100%、大腸壁肥厚 59%
・壁肥厚の非連続な分布 41%
・壁肥厚部の口側での腸管拡張 23%
・粘膜濃染 54%
・漿膜濃染 31%
・壁肥厚部近傍のVasa rectaの拡張 91%
・壁肥厚部近傍のstranding 73%
・リンパ節腫大 0%
AJR 2003;181:1621-1625
造血幹細胞移植後の腹部合併症
・ Pseudomembranous colitis (偽膜性腸炎;Clostridium defficile colitis)
抗生剤投与後のClostridium defficileの異常増殖
毒素による腸液増加、粘膜透過性亢進による激しい水溶性下痢
・ Cytomegalovirus (CMV) Gastroenteritis
食道、胃、腸管に広範な潰瘍形成、穿孔なども
・ Neutropenic colitis (白血球減少性腸炎、typhlitis;盲腸炎)
抗癌剤による粘膜上皮の破壊と白血球の減少による細菌(真菌)の侵入によって生じると推測されている。
盲腸が主たる病変部位。
壊死、穿孔、敗血症を生じやすい。
・ Candida and Aspergillus
主として食道の障害、重症例では肝、腎、脾にmicro abcessを形成
これらは基本的には感染症であり、対応する抗生剤、抗ウイルス薬投与で対処する。
ステロイド投与が必要なGVHDとの鑑別は重要。
・ GVHD
・ hepatic veno-occlusive disease (VOD)
Radiographics. 2005;25:305−317
CTによる鑑別診断
・偽膜性腸炎(PMC, Clostridium defficile colitis)
広範な結腸病変 (小腸は稀)
腸管壁肥厚が著明 (平均12mm厚)、結節状壁肥厚が見られる
・Neutropenic enterocolitis(typhlitis)
盲腸〜右側結腸が中心 (小腸病変も生じ得る)
pneumatosis intestinalisが見られることがある
・CMV腸炎
広範な壁肥厚を呈することが多い
・GVHD
部位に特異性はない
粘膜濃染、腸管拡張の頻度が高い
Radiology 2003;226:668-674
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