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第324回東京レントゲンカンファレンス
2010年10月28日
症例5 70歳代 女性
   

卵巣明細胞腺癌
clear cell adenocarcinoma of the ovary



T1強調横断像/T2強調横断像
脂肪抑制T1強調横断像/造影脂肪抑制T1強調横断像

 

MRI追加画像

T2強調横断像
T2強調矢状断像

 

画像所見のまとめ
・左卵巣由来と思われる骨盤腔内の嚢胞性腫瘤
・内容液がT1高信号、脂肪抑制されない
・内容液後方にT1高、T2低信号の貯留物
・嚢胞内に造影効果のある壁在結節

診断:卵巣明細胞腺癌

肉眼所見
・左卵巣は6.5×4cmの嚢胞性病変
・内壁は大部分平滑だが、一部に結節性病変が形成される

組織所見
・壁在結節については、明るい胞体を持った淡明細胞が充実性に増殖
・内膜症ははっきりしない
・壁外浸潤なし

明細胞腺癌
・本邦では上皮性悪性卵巣腫瘍の21%を占める
・22%(9〜42%)に内膜症合併
・本邦では I / II 期が58〜75%
・漿液性腺癌と比較して、プラチナ製剤に対する感受性が低い
・漿液性腺癌と比較して、生存率が低い

  肉眼標本


明細胞腺癌(参考)
・内膜症の癌化率   20代 0.57% 30代 1.29% 40代 4.11% 50代 21.9% 60代 49.1% → 年齢とともに上昇
・内膜症の手術適応
 40歳以上で4cm以上、若年でも10cm以上、閉経後も残存する内膜症性嚢胞 など
・手術で可能な限り切除
 術前の画像診断で、転移や播種がないかを確認

明細胞腺癌の画像
・大きな単房または多房嚢胞に、造影効果のある壁在結節を伴う
・内膜症を反映し、内容液はT1高信号(血液)
・充実性成分が優位となる頻度は低い
・画像上の鑑別として、嚢胞性卵巣腫瘍内の出血 (=鑑別難)
 漿液性腺癌、類内膜腺癌; 充実成分が多い、進行癌が多い
 粘液性腺癌; stained glass appearance  


参考文献
・【子宮内膜症の新しい考え方】 病態 チョコレート嚢胞の癌化:野村弘行 他: 産科と婦人科 75 (1) 5-10, 2008
・婦人科癌 卵巣明細胞腺癌の特徴と取扱い:杉山徹 他: 癌と化学療法 35(2) 228-232, 2008
・Yoshikawa H, et al. Prevalence of endometriosis in ovarian cancer. Gynecol Obstet Invest 50:11-17, 2000

 

 
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