脊索腫 |
症例のまとめ・50歳代 女性
・脳神経VIth神経障害がある。Vth神経障害はない。
・血液・生理学的検査に異常はない。(腫瘍マーカー陰性・タンパク正常)
・既往歴(家族歴)はない。
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画像のまとめ・錐体尖から、斜台外側の分葉状腫瘤
・上内側はMeckel 腔に進展、後下方は内耳道と離れる
・錐体尖の骨破壊(融解)
・分葉状の形態、境界明瞭
・石灰化なし
・T2WIで著明な高信号
・強い造影増強
・血管造影(非供覧)で造影増強効果なし
臨床情報のポイント
・脳神経Vth異常なし、VIth麻痺
【鑑別診断】
・三叉神経鞘腫 (Trigeminal Schwannoma)
・脊索腫 (Chordoma)
・軟骨腫 (Chondroma) /軟骨肉腫(Chondrosarcoma)
・転移性骨腫瘍 (Metastasis)
・形質細胞腫 (Plasmacytoma)/多発性骨髄腫(Multiple myeloma)
・髄膜腫 (Meningioma)
・類上皮腫 (Epidermoid cyst)
・コレステロール肉芽腫 (Cholesterol granuloma)
・グロムス腫瘍 (Glomus tumor)
・海綿状血管腫 (Cavernous angioma)
Chordomaについて・骨原発腫瘍の3〜4% 頭蓋内腫瘍の0.2% notochordの遺残から発生
・好発部位は仙尾骨・斜台 正中に生じやすい。
・斜台のものは、第6脳神経麻痺が特徴的。
・T2強調像で強い高信号、強い(網目状)の造影増強効果。
・Doucet らによると、
➀橋前槽へと背側へ進展
➁辺縁は分葉状で網目状の造影増強
➂初期における骨の膨張性変化
➃隣接組織へ腫瘍が進展すると溶骨性変化 が特徴。
・Steven らによると、頭蓋内に生じたChordoma 28例のうち発生は24例が斜台正中付近 4例が正中を外れていた。
(うち3例がChondroid chordoma と診断)骨への浸潤は28例が斜台、23例が側頭骨、4例が後頭関節丘に浸潤していた。
Steven P. et al. Chordimas of the Skull Base: MR Features. AJNR. 1992 Nov-Dec;13(6):1627-36.
Doucet, V et al. MRI of intracranial chordomas. Extent of tumour and contrast enhancement:
criteria for differential diagnosis. Neuroradiology. 1997 Aug;39(8):571-6.
三叉神経鞘腫と混同した例・錐体尖に生じた例
・Brown らは錐体尖に生じた脊索腫の特徴として
➀斜台付近にも病変があり、側頭骨に沿った進展
➁中頭蓋窩への進展
➂正円孔、卵円孔と関連がない進展
➃骨の溶骨性変化 があり 鑑別に役立つと報告している。
・Falcioni ら、Lu らは側頭骨近傍にあり、Meckel 腔に伸展するダンベル状の形態を呈したChordoma をTrigeminal Schwannoma と誤診した例を報告している。
Chordoma とShwannoma にはT2WI高信号、強い造影増強効果、骨破壊など共通点があり注意が必要である。
Brown, R V et al. CT and MR findings in patients with chordomas of the petrous apex. AJNR Am J Neuroradiol. 1990 Jan-Feb;11(1):121-4.
Lu, C-Y et al. Chordoma mimicking the trigeminal schwannoma: a case report. Clin Imaging. 2004 May-Jun;28(3):187-90.
Falcioni, M et al. Clival chordoma mimicking a trigeminal schwannoma. Otol Neurotol. 2001 Sep;22(5):706-7
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Chondroma,Chondroid chordomaとChondrosarcomaの違い・概念的(定義上の)違いとしてChondroid chordomaは軟骨性のヒアリン組織を含むことが特徴である。
Chondrosarcomaとの鑑別は免疫染色でサイトケラチン抗体や上皮膜抗体の発現で分類されることが多い。
Chondroid form(Chondroid chordoma)とLow gradeのChondrosarcomaとの鑑別は論点となる問題である。
・臨床的にはChordomaのうち、Chondroid chordomaは正中よりも外側にできるという報告がある。
ヒアリン組織を反映してT1強調/T2強調ともに信号値が低下するという報告がある。
・実際には、病理医や施設によって異なる場合も多い。
Take home messages・頭蓋底腫瘍ではつねに、Chordomaを考慮する必要がある。
・T2WI高信号はChondroma/Chondrosarcomaだけでなく、Chondroid chordomaでもみられる。
・第VI神経(外転神経)障害を来しうる腫瘍としてChordomaが挙げられる。
・Chordomaは通常正中にできるが、側頭骨(や稀に副鼻腔)にも生じうる。
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