東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧第333回症例 ≫ 症例7:診断
第333回東京レントゲンカンファレンス
2012年1月26日
症例7 40歳代 女性 : 腹痛、嘔気、嘔吐、下痢
    静脈硬化性大腸炎
phlebosclerotic colitis

 

(特発性腸間膜静脈硬化症:Idiopathic mesenteric phlebosclerosis)

Phlebosclerotic colitis・1991年小山らにより報告
 :上下腸間膜動静脈、特に静脈の還流異常による静脈硬化症(Phlebosclerosis)と続発した血栓形成による虚血性腸炎?!
・1993年岩下ら:「静脈硬化症による大腸虚血性病変」を提唱
 ➀発症部位はすべて右半結腸、特に盲腸から上行結腸に所見強い
 ➁半月ヒダの腫大・消失、腸管壁の著明な肥厚、表面・割面ともに暗紫色で潰瘍形成はほとんどない
 ➂静脈壁の著明な線維性肥厚と石灰化、粘膜下層の高度な線維化と粘膜固有層の著明な膠原線維の血管周囲沈着、
 粘膜下層の小血管壁への泡沫細胞の出現、血栓形成はない

・2000年Yaoら: Phlebosclerotic colitisの名称を提唱
 ➀腹部単純撮影:右側結腸の走行に一致して糸状の石灰化像
 ➁腹部CT:右側結腸の腸間膜付着側に腸壁の肥厚と多発する小石灰化
 ➂注腸:右側結腸に管腔の狭小化、ハウストラの消失、辺縁の不整、硬化像、拇指圧痕像

・最近では特発性腸間膜静脈硬化症を提唱→炎症の主体は膠原線維の沈着なので

病因 不明(基礎疾患のない症例が約40%)
※門脈圧亢進症、膠原病に伴う血管炎、血栓性静脈炎、長期の有機溶媒の暴露、腸管内圧の亢進・・・?
年齢 28〜80(61.2)、50歳以上が87.2%
性別 男女比はほぼなし(1:1.4)
症状 腹痛(69.4%)、下痢(25%)、下血(8.3%)、嘔吐(36.1%)、イレウスや無症状もあり
部位 盲腸〜横行結腸(62.2%)、盲腸〜下行結腸(18.9%) 盲腸〜上行結腸(5.4%)、盲腸〜S状結腸(5.4%)、 回腸末端〜横行結腸(5.4%)、回腸末端〜下行結腸(2.7%)
→盲腸から上行結腸の病変がどれも著明で肛門側に行くに従って病変は軽くなる傾向
経過 2週間から6年と慢性的な下痢、腹痛と嘔吐での経過が多い
腹部単純撮影 右側結腸の走行に一致した石灰化像(90.3%)初診時に石灰化はなく、経過とともに出現した症例もあり
腹部CT 病変部腸管の壁肥厚、肥厚した腸管壁内に線状の石灰化像 注腸:拇指圧痕像(53.3%)、腸管壁の硬化(53.3%)、壁の不整(16.7%)、管腔の狭小化(40%)、ハウストラの消失(2.3%)
→上行結腸に所見がつよく、肛門側に行くに従って軽度
内視鏡 右側結腸を中心に血管透見像が消失、光沢のない暗青色、青銅色などの粘膜所見(79.3%)、びらんや潰瘍(62.1%)、拡張・怒張した静脈(13.8%)
治療 55.3%で手術、44.7%は保存的療法


参考文献
・www.midb.jp/db/ en/node.php?pid=1470 Copyright 1998-2004 National Kyushu Cancer Center All rights reserved