慢性浸潤性真菌性鼻副鼻腔炎 chronic invasive fungal rhinosinusitis |
鑑別診断 |
・視神経周囲炎 −特発性眼窩炎症、腫瘍性・肉芽腫性疾患
・Tolosa-Hunt症候群 −眼窩部痛、同時〜14日以内のIII,IV,V,VI脳神経の一つ以上の麻痺(診断基準より)
・浸潤性真菌性副鼻腔炎
真菌性鼻副鼻腔炎1)3)4) |
・原因真菌:アスペルギルス(>50%)、ムコール症
・浸潤性アスペルギルス症:骨破壊、頬部腫張、眼球突出
・ムコール症:糖尿病性ケトアシドーシス下で発生
・カンジダ:広域抗菌薬使用の健常人、上顎骨外傷後
・CTの有用性:解剖学的な骨構造の破壊の有無と石灰化の検出
・MRIの有用性:有用性を示す根拠はない。腫瘍や頭蓋内合併症で有用。
真菌性副鼻腔炎における、T2強調像の低信号強度は、CTでの高濃度より診断に有用
急性浸潤性真菌性鼻副鼻腔炎3) |
・血管侵襲著明:骨破壊・侵食、軟部組織浸潤
・眼窩内脂肪混濁:早期浸潤性を示唆
・臨床経過は4週間以内
・アスペルギルスが最多:免疫抑制患者
・次いでムコール:糖尿病患者
・発熱、顔面痛、頭痛
・石灰化は起こりにくい
・抗真菌薬全身投与、免疫能回復、外科的切除:治療の遅れで4割〜半数が死の転帰
慢性浸潤性真菌性鼻副鼻腔炎3) |
・鼻副鼻腔外への炎症波及や骨破壊
・4週間以上の経過
・予後は比較的良好
・血管侵襲は乏しい
・免疫能は正常
・アスペルギルスが最多
副鼻腔炎症性疾患の眼窩合併症1)3) |
・眼窩内合併症は3%:Chandler病期分類
・篩骨蜂巣の炎症に多い
・篩骨紙様板は非常に菲薄である
・前及び後篩骨静脈に弁がない
・浸潤性真菌症:早期診断が予後に非常に重要
・stageI 眼窩中隔前蜂窩織炎(〜20%)
・stageII 紙様板の骨膜炎、眼窩内蜂窩織炎(24〜27%)
・stageIII 眼窩骨膜下膿瘍(41〜62%)
・stageIV 眼窩、円錐内膿瘍(12〜13%)
・stageV 海綿静脈洞血栓(まれ)
視神経周囲炎optic perineuritis2) |
・症状:球後視神経炎と類似
・視神経鞘腫張、T2強調像・STIR像高信号、視神経周囲の異常増強効果
・視神経自体は保たれる
・特発性眼窩炎症の1病態が多い
・Wegener肉芽腫症、リンパ増殖性病変、悪性リンパ腫との鑑別
・髄膜腫や髄膜播種で類似
・基礎疾患の有無、病歴の確認
視神経炎optic neuritis2)3) |
・多くは多発性硬化症
・炎症性偽腫瘍、サルコイドーシス、ウィルス性疾患、副鼻腔炎(15〜20%:後篩骨洞炎や蝶形骨洞炎)の波及
・症状:視力低下及び視野欠損
・視神経管領域での侵襲が多い
・慢性期も異常高信号、活動性の診断には造影後の脂肪抑制T1強調像が有用
菌球3) |
・鼻中隔弯曲、中鼻甲介鉤状突起肥大による洞内嫌気的状態が関与
・免疫能正常:罹患者の免疫能低下で浸潤性への移行あり
・アスペルギルス:最多
・片側性:99%,上顎洞:94%
・石灰化1/3〜80%:真菌塊中心壊死
・Pseudoaeration:真菌代謝産物(鉄イオン・マンガン)
・内視鏡下摘出:再発なし
アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎3) |
・炎症性かアレルギー性か定説がない
・若年に多い
・多発性鼻茸
・真菌性鼻副鼻腔炎では最多
・過半数にアトピーや喘息が合併
・粘膜肥厚と好酸球豊富なムチンと真菌貯留
・粘膜下浮腫
・骨・粘膜への組織浸潤なし
Take home point |
・炎症性肉芽のT2強調低信号は重要且つ有用である
参考文献
・Furguson BJ:Otolaryngol Clin North Am 33:227-235,2000
・Bent JP et al Otolaryngol Head Neck Surg 111:580-588,1994
1)尾尻博也:頭頚部の臨床画像診断学 改訂第2版 Head and Neck Imging, 2nd Edition. 南江堂;56-113
2)多田信平/黒崎嘉久:頭頚部のCT・MRI. メディカル・サイエンス・インターナショナル
3)監修 多田信平、編集 尾尻博也 酒井修:頭頚部のCT・MRI. メディカル・サイエンス・インターナショナル
4)副鼻腔疾患の画像診断ガイドライン 2007年版 日本医学放射線学会および日本放射線科専門医会・医会共同編集
5)Arash K. et al: Imaging of Chronic and Exotic Sinonasal Disease: Review. AJR2007;189:S35-S45
6)David R.Delone et al: Disseminated Aspergillosis Involving the Brain: Distribution and Imaging Characteristics. AJNR1999;20:1597-1604
7)田口勝二 他 本邦初のBipolaris spiciferaによるアレルギー性真菌性副鼻腔炎 Jpn J.Med.mycol2004;45:239-245
8)東京レントゲンカンファレンス 第320回 症例4:http://www.jcr.or.jp/trc/320/s4/320_4_1.html
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