卵巣漿液性嚢胞腺線維腫 serous cystadenofibroma of the ovary |
▼ 造影CT | ||
▼ T2WI sagittal | ||
▼ T2WI axial | ||
▼T2WI coronal | ||
▼ T1WI F/S axial | ||
▼ CE-T1WI F/S axial | ||
▼ CE-T1WI F/S coronal | ||
▼ T2WI cor | ▼ CE-T1WI cor | |
画像所見のまとめ |
・骨盤内、多房性、10.5×8p大
・右卵巣由来
・T1WIで低〜淡い高信号、T2WIで高信号
・一部結節状のやや厚い隔壁や壁肥厚あり、T2WIで強い低信号、増強効果(+)
粘液性/漿液性嚢胞性腫瘍
境界悪性や悪性を否定できない所見
・右付属器切除術施行。 ・肉眼的には大小様々の多房性で、嚢胞内に乳頭状突出する硬い病変を有する卵巣腫瘍。 ・内容液は漿液性。 ・組織学的には立方上皮に覆われ、上皮下に間質細胞の増生を伴い、悪性所見なし。 |
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serous cystadenofibroma(漿液性嚢胞腺線維腫) | ||
115×80×20mm大 |
卵巣腫瘍の臨床病理学的分類(卵巣腫瘍取扱い規約より抜粋) | |||
良性腫瘍 | 境界悪性腫瘍 | 悪性腫瘍 | |
表層上皮性・間質性腫瘍 | 漿液性嚢胞腺腫 粘液性嚢胞腺腫 類内膜腺腫 明細胞腺腫 腺線維腫(上記の各型) 表在性乳頭腫 Brenner腫瘍 |
漿液性嚢胞性腫瘍 粘液性嚢胞性腫瘍 類内膜腫瘍 明細胞腫瘍 腺線維腫 表在性乳頭状腫瘍Brenner腫瘍 |
漿液性(嚢胞)腺癌 粘液性(嚢胞)腺癌 類内膜腺癌 明細胞腺癌 腺癌線維腫 腺肉腫 悪性Brenner腫瘍 未分化癌 |
性索間質性腫瘍 | 莢膜細胞腫 線維腫 硬化性間質性腫瘍 セリトリ間質細胞腫瘍 (高分化型) |
顆粒膜細胞腫 セリトリ間質細胞腫瘍 (中分化型) |
線維肉腫 セリトリ間質細胞腫瘍 (低分化) |
胚細胞腫瘍 | 成熟のう胞性奇形腫 卵巣甲状腺腫 |
未熟奇形腫(G1,G2) カルチノイド 甲状腺腫性カルチノイド |
未熟奇形腫(G3) 未分化胚細胞腫 卵黄嚢腫瘍 胎芽性癌 |
その他 | 腺腫様腫瘍 | 性腺芽腫 | 癌腫 悪性リンパ腫 |
嚢胞腺線維腫 |
・組織像で著明な線維増生を伴う間質内に腺上皮が存在する表層上皮性・間質性腫瘍。線維成分が腺成分より主体。
・大きな嚢胞腔(1p以上)を形成 ⇒ 嚢胞腺線維腫
・12-85歳。40-50歳代に多い。両側性は12-20%。
・全良性卵巣腫瘍の1.7%。漿液性が最も多い(75%)。
・100例を超える画像所見についての報告あり。
・Counterpartとして、境界悪性の腺線維腫、悪性の腺癌線維腫が報告されている。
・悪性との鑑別が困難で、通常外科的に切除される。⇒ 術中迅速診断による過度の手術を避けることが重要
嚢胞腺線維腫の画像所見 |
【エコー】
・単房性 or 多房性嚢胞+充実性結節 or 乳頭状構造。
・カラードップラーで半数に血流あり。
【CT】
・単房性 or 3mm以下の隔壁を伴う多房性嚢胞。
・嚢胞部と充実部の混在。
・充実部に造影効果あり。⇒ 悪性腫瘍との鑑別困難。
【MRI】
1.純粋な嚢胞性で嚢胞腺腫と同様の所見を示すパターン。
・T2WIで強い低信号のびまん性もしくは部分的な嚢胞壁肥厚のみで、明らかな充実成分なし(43%)。
2.complex cystで充実部や厚い隔壁を伴うパターン。 ⇒ 術前画像診断で全例が悪性を疑われた。
・充実部内に小嚢胞を伴う構造(black sponge-like appearance)
嚢胞腺線維腫の鑑別診断:T2WIで低信号を呈しうるもの |
・線維腫 ・Fibrothecoma ・Brenner腫瘍 |
(充実部優位、遅延性の淡い増強効果、 ホルモン産生や石灰化を呈するものあり) |
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・Sclerosing stromal tumor (充実部は不均一、早期濃染) ・Struma ovarii (CTで高吸収、ゲル状内容物には増強効果なし) ・転移性腫瘍 (軽度低信号、充実部は不整、壊死を伴う) ・内膜症性嚢胞 (T1WI高信号、shading) ・境界悪性嚢胞性腫瘍/嚢胞腺癌(厚い隔壁、乳頭状結節、卵巣を超えて進展) |
Take Home Message |
卵巣腫瘍において、MRI T2WIで強い低信号を示す充実成分もしくは隔壁/壁肥厚を認めた場合、(嚢胞)腺線維腫を鑑別に挙げる必要がある。
参考文献
・Cho SM, et al. Eur Radiol 2004
・Outwater EK, et al. J Mag Reson Imaging 1997
・Alcazar JL, et al. J Ultrasound Med 2001
・Jung DC, et al. Korean J Radiol 2006
・Takeuchi M, et al. J Comput Assist Tomogr 2003
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