限局性結節性過形成(有茎性) pedunculated focal nodular hyperplasia |
腹部dynamic造影CT(単純/造影早期相/造影後期相) |
・肝と胃の間に60×54mmの分葉状腫瘤。
・腹水もあるために各臓器と離れて存在し一見由来臓器が不明。
しかし、血流をよく見ると・・・左肝動脈由来。
・単純 CT で低〜等吸収。
・Dynamic造影早期相で均一な濃染。
・後期相で肝実質と同程度の造影効果。
中心性瘢痕を有し、後期相でわずかな造影効果を有する。
腹部MRI T2WI | ||
・肝実質と比べ等~高信号 |
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腹部dynamic造影MRI(単純/造影早期相/造影後期相) |
・単純で正常肝実質よりやや低信号、中心性瘢痕はより低信号
・早期相で均一な強い造影効果
・後期相で肝実質とほぼ同様の造影効果
・後期相では中心性瘢痕にわずかな造影効果を有する
診断は・・
有茎性の限局性結節性過形成 pedunculated focal nodular hyperplasia
骨盤内に卵巣腫瘍があり、それにより腹水が多量に貯留していたので、それらの手術とともに肝腫瘤も切除されました。
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有茎性の肝腫瘤 |
1.限局性結節性過形成: 全体の8.8%
2.肝血管腫:剖検例の2.3%、手術例の15.2%
3.HCC:全体の0.3~2.4%
4.肝細胞腺腫:全体の10%
5.Fibrolamellar HCC:全体の20%
瘢痕を有する肝腫瘤 |
Common
・限局性結節性過形成:腫瘤径3cm 以上で中心性の血管性or炎症性瘢痕。瘢痕はMRI T2WIで高信号、遅延相で造影。
腫瘤は早期相より均一な造影効果、 石灰化(-)
・肝血管腫:腫瘤径5cm 以上で瘢痕(MRI T2WIで低or高信号)を有することあり、瘢痕は石灰化(+) が多い。
腫瘤辺縁より結節状の濃染がみられ、徐々に中心部に広がり、後期相で遷延する造影効果を有する
Less common
・Fibrolamellar HCC:MRI T2WIで低信号の線維性瘢痕(70%に石灰化)。
腫瘤径は12cm 以上のことが多い。胆管や血管への浸潤傾向(+)、65%に 転移 (+)
・HCC:中心性壊死や線維性瘢痕( MRI T2WIで低信号)。
肝硬変に生ずる内部性状不均一な腫瘤。典型例では造影早期相で濃染、後期相で washout
・肝細胞腺腫:中心部に脂肪、壊死、古い出血(瘢痕ではない)通常腫瘤径は8〜10cm、50%に出血(+)。
内部性状は出血、壊死、脂肪のために不均一
・胆管癌(末梢性):中心性の線維性瘢痕
・転移性肝腫瘍:中心性壊死(瘢痕ではない)、多発例が多い
・類上皮血管内皮腫:中心性壊死。
FNH |
・限局性の血流異常に対する肝細胞の過剰再生を成因とする過形成結節
・肝腫瘤中2番目に多い(剖検例での原発性肝腫瘤の8%)
・非硬変肝に発生
・85%は5cm以下、平均径は3cm
・30~40歳代の女性に多い(うち37.8%で経口避妊薬の内服歴)
・肝右葉:肝左葉=2:1、 単発は80%、多発は20%
・有茎性は全体の8.8%
・80%以上は無症状(50〜90%は偶然に発見)
・多発性のものは他臓器の血管奇形や脳腫瘍との関連あり
・予後良好
・無症状のものは経過観察、経口避妊薬内服中の場合は中止
・画像上境界明瞭な腫瘤、通常被膜を持たない
・単純CT:低〜等吸収
・MRI:T1、T2強調像ともに均一で肝と同程度の信号強度
・CT 、 MRI ともに早期相より均一な強い造影効果
・腫瘤内にクッパー細胞が存在(15.4%で減少or欠損)
T2WI with superpara magnetic iron oxide(SPIO)造影で低信号
Gd-EOB-DTPA 造影で取り込まれ高信号となることが多い
99mTc コロイドシンチグラフィにて集積あり(約60%)
・中心性瘢痕:CTで<3cmの35%、>3cmの65%、MRIで78%にみられる
遅延相にて造影効果(+)、MRI T2WIで高信号
・血管造影:栄養動脈が中心瘢痕から入り、分岐しながら放射状に末梢に分布(spoke-like appearance)、その後肝静脈へ還流
参考文献
・S.Sawhney, et al. Pedunculated focal nodular hyperplasia: Pediatr Radiol. 1992 22:231-232
・Kamel G, et al. Atlas of Tumor Pathhology: AFIP. 1999
・Federle MP, et al. Diagnostic Imaging ABDOMEN: AMIRSYS. 2005
・Ersoz et al. Torsion of a giant pedunculated liver hemangioma mimicking acute appendicitis: World Journal of Emergency Surgery 2010, 5:2
・Mao-Lin Yan, et al.Pedunculated hepatocellular carcinoma and splenic Metastasis: World J Gastroenterol 2009 November 7; 15(41): 5239-5241
・Theodore K, et al. Giant pedunculated hepatocellular carcinoma with hemangioma mimicking intestinal obstruction:BMC Gastroenterology 2011, 11:99
・Federle MP, et al. EXPERT ddx ABDOMEN: AMIRSYS. 2009
・Ichikawa T, et al. Fibrolamellar HCC: imaging and pathologic findings in 31cases. Radiology 213:352. 1999
・Reeder MM, et al.Gamuts in radiology:Springer.2003
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