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第 340 回 東京レントゲンカンファレンス[2012年11月22日]
症例5 40歳代 女性 : 右下腹部痛
小腸アニサキス症
anisakiasis of the small intestine

 

 アニサキス症

・ヒトがサバ、アジ、イカ、イワシなどのアニサキス中間宿主を生食することで成立する消化管幼虫移行症。
・再感染によるアルツス型のアレルギー反応や幼虫が放出する好酸球輸送因子が発症に関与すると考えられている。
・小腸アニサキス症は、消化管アニサキス症全体の約2.5%。

 

 小腸アニサキス症

・急性腹症として開腹され、はじめて診断される症例がある。
・虫体の死亡・吸収により通常は1 週間以内には症状が軽快。
・小腸アニサキス症が疑われた症例であっても壊死、穿孔、腸重積、出血、絞扼性腸閉塞の報告例もあり、手術適応を十分に考慮した治療法を選択する必要。
・血清学的診断も有用。しかし、アニサキス抗体の測定結果を得るのに通常1 週間程度かかること、不顕性感染で偽陽性になること、ペア血清の測定が望ましいことより早期診断には役立たない。

小腸アニサキス症早期診断基準
1.発症数日前に鮮魚を生食している。
2.腹痛が激烈で、腹水が多い割には、全身状態が良好で、腹部の理学的所見も軽度である。
3.腹部単純レントゲン写真:腸閉塞の像をみとめる。(臥位像で小腸loop、立位像で鏡面像)
4.腹部超音波:腹水の貯留をみとめる。

追加 腹部造影CT:以下の所見をみとめる。
1.造影効果を伴う限局性・全周性の小腸壁肥厚、内腔の狭小化
2.それより口側の小腸の拡張と液面形成を伴う液体貯留
3.腹水貯留

 

参考文献
・松本主之,藤澤 聖,迫口直子ほか:消化管感染症2002 消化管アニサキス症.胃と腸(2002) 37,429-436.
・浦上尚之, 高橋寛, 神長憲宏ほか:感染症症候群(II) 寄生虫症 腸アニサキス症. 日本臨床 別冊感染症症候群II 1999,464-465
・唐澤洋一, 唐澤学洋, 神谷和則ほか:最近の消化管アニサキス症について第2 回全国集計報告.日本医事新報 2008 4386, 68-74.
・佐久間郁郎, 斎藤裕:小腸アニサキス症のCT 所見.日本医学放射線学会雑誌2000 60(8),459-460.
・田中三千:【消化器疾患(Ver.2) state of arts 胃・腸】 主要疾患 現況・病態・診断・治療アニサキス症.医学のあゆみ別冊消化器疾患 1998;339-340
・高木幸浩, 阿部達彦,佐治重豊:急性虫垂炎として開腹した小腸アニサキス症の一例.外科治療1992,67(3) 348-350
・深田伸二, 蜂須賀喜多男, 山口晃弘ほか:イレウス症状をきたした小腸アニサキス症3 例の検討.臨床外科1984 39(5),707-711
・岩上栄, 川上和之, 川浦幸光ほか:腸重積を伴った腸アニサキス症の1 例.日本消化器外科学会雑誌1995 28(10), 2037-2041
・本田真広, 金子唯, 藤田基ほか:出血性ショックを来した小腸アニサキス症の1 救命例.日本救急医学会雑誌 200516(3),131-135
・藤井清香, 西江学, 濱野亮輔ほか:イレウス症状で発症した小腸アニサキス症の1 例.岡山医学会雑誌 2009121(1),25-27
・加納宣康,山田直樹,原 聡ほか:小腸アニサキス症例の臨床的検討―早期診断基準の提唱―.日臨外会誌(1990)51,1883-1889.


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