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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第340回症例症例:呈示
第 340 回 東京レントゲンカンファレンス[2012年11月22日]
症例7 50歳代 女性 
肝血管肉腫
hepatic angiosarcoma


生活歴:トロトラスト、塩化ビニル、ヒ素の暴露歴なし
検査所見:腫瘍マーカーの上昇なし、その他特記すべき異常検査データなし(HBV・HCV陰性)
現症、バイタルサイン

 画像所見

【初診時の腹部造影CT】
・肝右葉被膜下に肝実質を圧排するようなまだらな低吸収域を認め、内部にいくつかのextravasationを疑う高吸収域、
 そのほかにもいくつかの末梢側に造影効果を認める腫瘤あり。
・後区域のそれは大きくて隔壁をもっている様でもある。
・IVC内にも浸潤しているよう
・骨盤内には腹水貯留

 

TAE➀(未提示)
経過   左:右肝動脈 TAE前/右:前区域をTAE後
スポンゼルで塞栓

 

【TAE、3週間後の+−】
・被膜下の低吸収域は残存し、一部充実成分のようにもみえる。
・後区域のmass lesion もまだらな低吸収域も増大。
・当院へ紹介後も、MRI撮像はされてない

 

 

 所見のまとめ

・肝被膜下血腫、腹腔内出血
・末梢側が造影される不整な肝腫瘤
・腫瘤の中心部が低吸収、壊死or腫瘍
・IVC 内に血栓



 鑑別診断

・Hepatic cavernous hemangioma
・Hepatic metastases
・Hepatocellular carcinoma
・Hepatic adenoma
・Hepatic epithelioid hemangioendothelioma

 

【前医での経過】
3ヶ月前  肝被膜下出血、腹腔内に穿破
3ヶ月前 TAE➀(A5,8)、11/24  TAE➁(A7,8)
2ヶ月前 PET-CT → 異常集積像なし
2ヶ月前 TAE➂(A7,8)
直前 TAE➃(A7)→  精査加療のため当院へ転院

 

 

病理病理
Angiosarcoma of the liver
肉眼上、15×9cm大の出血が著明な腫瘍性病変を認め、腫瘍は出血性変化と拡張した嚢胞性病変を伴っています。
非腫瘍組織を含め、評価できる組織の残存がほとんどみられなかったが、出血壊死を伴う嚢胞構造周囲にNC比の高い、大型の多形細胞が血管様構造を伴ってみられ、異型核分裂像を認めた。免疫染色ではCD31,CD34,vimentin,p53が陽性で、cytokeratinが陰性

 

 

経過当院での経過
転院後 肝右葉切除+胆摘 病理:angiosarcoma of the liver
2ヶ月後 CT:肝左葉に腫瘍出現、腹水出現
2ヶ月後 weekly Paclitaxel  6回 →06/28 PD
4ヶ月後 Sorafenib 開始
5ヶ月後 CT:肝転移増大、大量胸腹水
6ヶ月後 永眠

 



 

 Hepatic angiosarcoma

・肝原発の悪性腫瘍の0.1%(2%以下)
・肝の間葉系腫瘍の中では最多(>fibrosarcoma>fibrohistiocytoma>leiomyosarcoma)
・50歳代(60〜70歳代)
・男女比は2:1(4:1)
・トロトラスト、塩化ビニルモノマー、ヒ素などの暴露歴、ステロイドの長期連用など
・Hemochromatosis や von Recklinghausen disease との関連
・腹痛、倦怠感、体重減少
・腹腔内出血で発症(27%)
・血小板減少、DIC
・α-fetoprotein や CEA の上昇なし
・免疫染色では血管関連マーカー(CD31、CD34、抗factor[抗体)、間葉系マーカー(vimentin)が陽性
・治療:肝切除(切除率は20%程度)、切除不能例には化学療法、放射線療法、肝移植など
・予後:生存中央値 6ヶ月

 

トロトラスト®
・二酸化トリウムを主成分とする血管造影剤
・主に肝に沈着、α線の長期暴露によって肝悪性腫瘍を発症する
・肝血管肉腫の他に、肝細胞癌、胆管細胞癌、白血病の発症リスクも高い

トロトラストとは、第二次大戦中に使用された血管造影剤トロトラスト(Th)は注射されると、主に肝に沈着する。被注入患者(Th症)は、α線の長期暴露によって肝悪性腫瘍を発症する。

トロトラストによる放射線の晩発障害 原子力百科事典ATOMICA 2001

 

CT(参考症例)
経過   肝臓、脾臓にvasucularなmassを多数認め、不均一な造影効果をしめす。いくつかの部分は血管腫様の末梢側が造影されるパターンを認めるが、良性病変としてはその他の所見(肝静脈内にも認めたり)が合わない
MRI(参考症例)
経過   T1WI MR 肝両葉にまたがった低信号のmassの中にfocalな高信号が描出されています。出血、flowの遅い血管腔と考えられます。
T2WI ではmassは高信号

Image findings
・出血や壊死を反映した低吸収域(高吸収域)を認める腫瘤
・単発/多発の血管腫様の造影増強効果
・脾、肺、骨にしばしば転移する

 

 結語

・肝血管肉腫は肝原発悪性腫瘍の中でもまれで、術前の診断には苦慮することが多い。
・肝からの出血をみた時に、本疾患を念頭にいれ、読影することが必要である。

 

参考文献
・Radiology Review Manual 7th 734-735
・Buetow et al : Malignant Vascular Tumors of the liver : Radiologic-Pathologic Correlation RadioGraphics 14 153-166 , 1994
・高橋ら:肝血管肉腫破裂の1例 日消外会誌 34(5) 490-494 , 2001
・山村ら:切除で診断し得た肝血管肉腫の1例 肝臓 29 808-813 , 1988


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Moderator: 和田 慎司