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第 347 回 東京レントゲンカンファレンス[2013年10月24日]
症例5 10歳代 女性 : 腹痛、発熱
肺葉外肺分画症の捻転
torsion of an extralobar pulmonary sequestration

 

 鑑別診断

<肺内>腫瘍(肺癌、肺芽腫など)、感染、円形無気肺非感染性非肉芽腫性(リウマチ結節など)、炎症性偽腫瘍、CPAM
<縦隔>神経原性腫瘍、脊椎椎間板炎による腫瘤形成、髄外造血
<胸壁>胸壁原発腫瘍、感染、外傷
<肺内・縦隔・胸壁>悪性リンパ腫、膿瘍、転移性腫瘍
<その他>血腫、肺分画症肺葉外,肺葉内)、原発性胸膜腫瘍→肺葉外肺分画症の捻転


 肺分画症

・気管気管支と交通がない非機能性肺組織で腫瘤を形成する。
・正常肺とは別に、1 から数本の栄養動脈が認められることが多い1) -3)
・すべての肺奇形の0.15〜6.45%とされる4)
・肺内型分画症(正常肺との境界に胸膜がなく、正常肺と胸膜を共有)と肺外型分画症(独自の胸膜で包まれる)に分けられる。
・肺内型と肺外型の比率は3:1 5) 〜7:1 6)とされている。

肺葉外肺分画症
・左側横隔膜近傍に多く、80%が左側に存在する7)
・供給血管のほとんどは、大動脈あるいはその分岐である。
・還流静脈は奇静脈あるいは門脈。
・横隔膜ヘルニアなどの合併奇形が多く、新生児期での発見が多い8)
・ 胸膜に囲まれており、感染は少ない。

肺葉外肺分画症の捻転
・極めて稀な病態で、小児での発症が多い。
・左側での発生がほとんどである。
・症状は腹痛、胸痛、嘔吐、側腹部痛などがあり、胸水を伴うことがある。
・捻転によりリンパの鬱滞、早期の静脈閉塞をきたし、腫瘤内が鬱血、二次的に動脈塞栓を起こし梗塞に至ると考えられている。

 

 画像所見

[胸部単純X 線写真]
・病変部の透過性低下と患側の胸水貯留。
[US]
・heterogenous もしくはhomogenous な輝度を呈し、境界明瞭な腫瘤。ドップラーで血流シグナルを認めない。
[CT]
・卵円形の境界明瞭な増強効果の乏しい腫瘤。
・栄養血管を同定できるとは限らない1)2)
・石灰化を認めることがある9)
[MRI]
・T1WI,T2WI 共に低信号を呈した。10)
[PET]
・SUV 値:2.1 を示したという報告がある。11)

 

 結語

・小児〜若年者において、肺底部に腫瘤を認め、腹痛を呈していたら、肺葉外肺分画症の捻転を考慮する必要がある。

 

参考文献
1)Pediatr Surg Int, 20: 218-220,2004.
2)J Thorac Imaging, 22: 166-168, 2007.
3)Chest, 68: 98-99, 1975.
4)J Pediatr Surg, 42: 1127-1129, 2007.
5)J Path 58: 457-467, 1946.
6)Thorax 34: 96-101, 1979.
7)Journal of Pediatric Surgery (2007) 42, 1127-1129
8)Radiol Clin North Am 1991; 29 : 241-254
9)Clinical Radiology 68 (2013) 94-97
10)日小外会雑誌 第44 巻2 号 2008 年4 月
11)Journal of Pediatric Surgery (2011) 46, 2025-2028


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