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第 348 回 東京レントゲンカンファレンス[2013年11月28日]
症例4 60歳代 女性 : 咳、痰
パスツレラ症(パスツレラ肺炎)
pasteurellosis(pasteurella pneumonia)

 

 パスツレラ症

・パスツレラ属(Pasteurella)菌を起炎菌とする人獣共通感染症。
・大部分はPasturella multocidaによる。
・パスツレラ属菌は犬や猫などに常在菌として存在し、特に猫の保有率が高い。
・皮膚感染症、呼吸器感染症、全身感染症などがある。
・ほとんどが日和見感染症であり、高齢者や糖尿病、AIDS等の免疫低下を示す基礎疾患罹患者が特に感染しやすく、重症化しやすい。
・感染経路として、動物の咬傷・掻傷による経皮感染や口移しで餌を与える等ペットとの過剰なスキンシップによる経口感染が多いが、飛沫感染も稀にあり。
・呼吸器感染症としては肺炎、気管支炎、肺膿瘍、膿胸、副鼻腔炎などがあり、肺炎が最も多い。
・多くの抗生物質が有効性を示し、一般に予後は良好。
・予防としてはペットとの過剰な接触を避けること。

 

 パスツレラ肺炎

・高齢であることや免疫低下状態に加えて、呼吸器に基礎疾患を有している患者に発症しやすく、大部分の症例で呼吸器に基礎疾患を有している。
・呼吸器基礎疾患として、気管支拡張症が最も多く、その他慢性気管支炎、肺気腫、DPB、陳旧性結核、肺癌手術後などが挙げられる。
・ペット飼育による反復感染の報告もある。
・易感染性宿主では重症化することもあり、注意が必要。

 

 診断

・喀痰など検体からの菌の分離同定による。
・動物との接触歴の聴取が重要。
・パスツレラ肺炎の単純写真・CT所見としては浸潤影を呈することが多いが、Tree-in-bud appearanceを呈することもある。
・呼吸器基礎疾患を有していることが多く、その場合は気管支拡張など基礎疾患の画像所見も認められる。
・画像所見のみで診断することは困難であるが、易感染性や呼吸器基礎疾患の存在、ペット飼育歴がある場合はパスツレラ肺炎の可能性を念頭に置く必要がある。

 

 鑑別診断

・他の細菌性肺炎
・マイコプラズマ肺炎
・肺結核
・非結核性抗酸菌症
・アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
・びまん性汎細気管支炎
・HTLV-1関連細気管支炎・肺胞異常症

 

参考文献
・Miyashita T. Pasteurella multocida pneumonia. Ryoikibetsu Shokogun Shirizu 1999; 23: 384-386.
・Miyashita T, Kunii O. Human pulmonary pasteurellosis. Ryoikibetsu Shokogun Shirizu 1994; 3: 57-59.
・Marinella MA. Community-acquired pneumonia due to Pasteurella multocida. Respir Care 2004; 49: 1528-1529.
・Klein NC, Cunha BA. Pasteurella multocida pneumonia. Semin Respir Infect 1997; 12: 54-56.
・Starkebaum GA, Plorde JJ. Pasteurella pneumonia: report of a case and review of the literature. J Clin Microbiol 1977; 5: 332-335.
・Ribas J, Lores L, Ruiz J, et al. Pancoast's syndrome due to chronic pneumonia by Pasteurella multocida. Eur Respir J 1997; 10: 2904-2906.
・Sugino Y, Kato M, Yagi A, Kawabata A. Pasteurella multocida pneumonia with molecular evidence of zoonotic transmission. Kansenshogaku Zasshi 2007; 81: 726-730.
・Gonda H, Noda Y, Ohishi T, et al. A clinical study on patients detected Pasteurella multocida from sputum. Kansenshogaku Zasshi 2001; 75: 780-784.
・Oyama Y, Naoki K, Kunikane H, et al. Severe Pasteurella multocida pneumonia by close contact with a pet in chronic respiratory failure. Nihon Naika Gakkai Zasshi 2007; 96: 1467-1469.


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