結節性硬化症に合併した腎細胞癌、
多発性微小結節性肺胞上皮細胞過形成 RCC and MMPH with TSC |
画像所見 |
【腎】 High-low patternの腎腫瘤 被膜を有する 境界明瞭で、変性に乏しい 結節状の石灰化あり 【肺】 【その他所見】多発子宮筋腫疑い、小さな脾動脈瘤 |
病理 |
・偽被膜で被覆される淡褐色調の充実性腫瘤 ・出血や壊死なし ・好酸性顆粒状の細胞質を有する腫瘍細胞が胞巣状に充実性増殖 |
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・腫大したU型肺胞上皮が肺胞腔を裏打ちする ・肺胞隔壁自体も線維性肥厚を認める ・悪性所見は認められない |
病理診断
腎 : 腎細胞癌(嫌色素性細胞癌)
肺:MMPH(多巣性微小結節性U型肺細胞過形成)
頭部CT | |
胸椎、腰椎(骨条件) |
最終診断:結節性硬化症に伴う腎細胞癌およびMMPH
結節性硬化症1-10 |
全身の過誤腫を特徴とする疾患
有病率1/7000、常染色体優性とされるが、2/3は弧発性
TSC1、TSC2の2種類の癌抑制遺伝子が関与
多臓器の病変を合併することが知られている
皮膚:白斑、顔面血管線維腫(皮脂腺腫)、シャグリンパッチ
頭蓋内:皮質下結節、上衣下結節、上衣下巨細胞性星細胞腫
肺:肺リンパ脈管筋腫症 (LAM) 、MMPH
腎:腎嚢胞、腎血管筋脂肪腫 、腎細胞癌
骨:骨嚢胞、頭蓋底の骨腫、骨硬化性変化、側弯
皮膚病変(約98%に存在)9
顔面血管線維腫(皮脂腺腫)
葉状白斑
爪下線維腫
粒起革様皮(シャグリンパッチ)
頭蓋内病変7-9
上衣下結節(88%、最多)
皮質下結節
大脳6層構造の異常
てんかん、自閉症、認知障害に関連
上衣下巨細胞性星細胞腫(1.7-26%)
肺病変5-9
LAM: lymphangioleiomyomatosis(リンパ脈管筋腫症)
肺病変で最多、約40%に存在
肺全体に薄壁嚢胞が分布
各嚢胞は気管枝と交通
合併症:気胸 (39-53%)、乳糜胸 (0-14%)
MMPH: multifocal micronodular typeU pneumocyte hyperplasia(多巣性微小結節性U型肺細胞過形成)5-7
結節性硬化症に関連した肺病変
比較的まれだが、28%との報告もある
U型肺胞上皮の過形成
多数の境界明瞭な1-10oのGGO
両肺にびまん性に分布する
上葉優位の報告もある
鑑別診断:肺転移、異型腺腫様過形成、肺腺癌
腎病変7-9
血管筋脂肪腫(61%)、多発嚢胞(28%)、腎細胞癌
血管筋脂肪腫
脂肪を含有、被膜のない多血性腫瘤
20%は結節性硬化症
腎細胞癌
明細胞癌、乳頭状癌、嫌色素性細胞癌の報告あり
健常人と比較して、発生頻度に差はないが発生年齢は若い
結節性硬化症(*TSC)の診断基準(修正Gomez基準)1 |
Definitive TSC:TSCであることが確実 ▶大症状が2つ、または大症状が1つ+小症状が2つ Probable TSC:TSCの可能性が高い ▶大症状が1つ+小症状が1つ Possible TSC:TSCが疑われる ▶大症状が1つ、または小症状が2つ以上 |
大症状 | 小症状 | * Tuberous sclerosis complex | |
3つ以上の白斑 |
過誤腫性直腸ポリープ |
結語 |
腎細胞癌とMMPHから結節性硬化症を推定し得た一例を経験した多発するGGOの鑑別の一つにMMPHがある
参考文献
1)難病情報センター 結節性硬化症
2)Kamiya H, et al. Japanese society of internal medicine 2006
3)Kobashi Y, et al. Japanese society of internal medicine 2005
4)Maruyama H, et al. Mod Pathol 2001
5)Kobashi Y, et al. Jpn J Clin Oncol 2008
6)Ross L, et al. AJR 2005
7)Umeoka S, et al. Radiographics 2008
8)澤田貴裕ら、 肺癌 2011
9)綿谷真理ら、PLoS ONE 2013
10)Ishii et al. JMCR 2012
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