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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第348回症例症例:呈示
第 348 回 東京レントゲンカンファレンス[2013年11月28日]
症例7 40歳代 男性
左精巣類表皮嚢胞
epidermoid cyst of the testis

 

鑑別診断

【陰嚢内嚢胞性病変】
 単純性嚢胞、白膜嚢胞、拡張した精巣網、精索静脈瘤、Leydig細胞過形成、精液瘤、
 類表皮嚢胞、悪性腫瘍、膿瘍、血腫、陰嚢水腫など・・

  →
(嚢胞を形成する)悪性腫瘍との鑑別が重要!

 

左高位精巣摘出術施行
   
img 検体は左精巣およびそれに連続する精索。割を加えた腫瘍は、表面平滑で黄色調、内部は一部泥状の充実性腫瘍。
   
img 組織学的には数層の扁平上皮で囲まれ、角化物を容れたepidermoid cyst。悪性像は見られない。

 

診断:Epidermoid cyst of the Testis 精巣類表皮嚢胞

 

【精巣(悪性)腫瘍】
15〜40歳位の比較的若年男性に多い
・胚細胞腫瘍(germ cell tumor)90〜95%
  精上皮腫(seminoma)40〜50%
  非精上皮腫(non-senimomatous tumor)20〜30%
   ー胎児性癌(embryonal cell carcinoma)
   ー奇形腫(teratoma)
   ー絨毛上皮腫(choriocarcinoma)
   ー卵黄嚢腫瘍(yolk sac tumor)・・・
  混合型30%
・間質腫瘍(stromal tumor)3〜6%
・混合型
・悪性リンパ腫2〜5%
・転移性腫瘍

 

Epidermoid cyst of the Testis

・一胚葉(外肺葉)由来の奇形腫の亜型とされている(WHO分類)(奇形腫は二胚葉あるいは三胚葉由来)
・全精巣腫瘍の1%程度に発生する比較的稀な腫瘍
・成人発生の奇形腫と異なり良性腫瘍であり予後は良好
・精巣の良性腫瘍では最も多い
・単発性が多く、大きさは0.8p〜10p、3p以下が7割を占める

 

画像的な特徴
【超音波】
・周囲組織と明瞭に区別できる
・周囲との境界にはEchogenic rimと呼ばれる高エコー信号を示す隔壁を認める場合がある
・腫瘍内部は不均一なエコー信号を示し、全体的に低エコーである時にOnion ringと呼ばれる層状構造を認める
・カラードップラーで血流シグナルを認めない

   
img 精巣内に境界明瞭、Hypoechoic、内部やや不均一なmassを認める
   

【MRI】
・T2強調像で嚢胞壁は低信号を示し、周囲組織と明瞭に区別できる
・内部は精巣実質と同程度以上に高信号を呈し、中心部に不均一な低〜中信号領域を認めることがある
・T1強調像では嚢胞壁、内部ともに低信号
・拡散強調画像では精巣実質と同程度以上に高信号
・造影MRIではenhanceされない

img

T2強調像

嚢胞を形成する精巣悪性腫瘍  多くは奇形腫または奇形腫の成分を含んでいる

画像上の特徴
・嚢胞は多房性、多発性、境界不明瞭であることが多い
・腫瘍内部は不均一な信号を呈し、様々な程度に造影される
*その他の精巣腫瘍では二次性に嚢胞形成が見られることがある

精巣悪性腫瘍との鑑別ポイント
【超音波】

 ・周囲組織と明瞭に区別できる嚢胞壁の存在  悪性腫瘍では見られないことが多い
 ・カラードップラーで血流シグナルを認めない  悪性腫瘍では血流信号の増加を認める

【MRI】
 ・T2強調像で低信号を示す嚢胞壁の存在 → 悪性腫瘍では見られないことが多い
 ・T2強調像で内部が高信号を呈する  悪性腫瘍では低信号/不均一な信号を示すことが多い
 ・造影効果を有する部位を認めない → 悪性腫瘍では様々な程度の造影効果を認めることが多い

治療
・症例数が少なく頻度も考慮すると、悪性腫瘍の可能性が除外できないという理由から、精巣摘出術が施行されることが多いのが現状である。
・しかし良性腫瘍の場合は、比較的若年者に発症することが多いこともあり、精巣温存術の適応が考慮される。
・画像所見は比較的特徴的であり、術前から本疾患が疑われた場合には、術中迅速病理検査などを合わせて積極的な精巣温存術が可能と思われる。

 

結語

・精巣腫瘍のほとんどが悪性腫瘍であるが、まれに類上皮嚢胞のような良性腫瘍が存在する。
・良性腫瘍に対する積極的な精巣温存術を施行するためには、画像所見を中心にした術前診断が重要であると考える。

 

参考文献
Woojin Kim, MD et al. RadioGraphics 2007;27:1239-53
US-MR Imaging Correlation in Pathologic Conditions of the Scrotum
Jae-Ho Cho et al. AJR 2002; 178: 743-748
Sonographic and MR Imaging Findings of Testicular Epidermoid Cysts
Paula F. Woodward, MD et al. RadioGraphics 2002;22:189-216
From the Archives of the AFIP 〜Tumors and tumorlike Lesions of the Testis: Radiologic-Pathologic Correlation

 

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Moderator: 横井 健人