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東京レントゲンカンファレンス TOP症例一覧 第351回症例症例:呈示
第 351 回 東京レントゲンカンファレンス[2014年4月24日]
症例6 70歳代 女性
後腹膜GIST(消化管間質腫瘍)
GIST of the retroperitoneum

 

画像所見

【CT】
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単純/ 早期相/ 門脈相/ 平衡相

・左腎の頭側に115×95mm大の境界明瞭かつ表面平滑な腫瘍
・内部は出血を疑う斑状の高吸収域と液体を疑う斑状の低吸収域が混在。
造影効果は全体的にやや弱いが均一に染まり、壊死を疑う非造影域あり。
・他臓器への浸潤傾向は低い。
・正常腎は下方に、左副腎は内側に圧排され、副腎とは分離

 

【MRI】
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DWI/ 脂肪抑制T2WI/ Opposed phase/ In phase/ 脂肪抑制造影T1WI
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T2WI/ 脂肪抑制造影T1WI

・病変は腎皮質に比し、T2WIで等信号と高信号域が混在。
・T1WIでは等信号で、内部に不均一な高信号域が散見される。
→内部の嚢胞・壊死や出血の混在を疑う。
・内部に脂肪信号はなく、病変はDWIにて高信号を示す。
・中等度の造影効果を示す。腎臓とは分離できるが、副腎の分離は困難。

 

【核医学検査】
FDG-PET/CT/ Ga-SPECT/CT/ MIBG-SPECT/CT
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・FDG-PET/CT
  後腹部腫瘍に一致し、軽度の不均一な集積亢進(SUVmax:2.76)
  遠隔転移を疑う異常集積なし。
・Ga sinchigraphy
  後腹部腫瘍に集積亢進は認めない。
MIBG sinchigraphy
  後腹部腫瘍に一致した集積亢進。

 

内分泌検査&腫瘍マーカー(入院経過)

ホルモン検査
メタネフリン(部分尿) 0.13 mg/dl NSE 9.8 ng/ml
ノルメタネフリン(部分尿) 0.33 mg/dl DHEA-S 528 ng/ml
アドレナリン 31 pg/dL CEA 1.5 ng/m
ノルアドレナリン 336 pg/dL カルシトニン 51 Pg pg/ml
ドーパミン 21 pg/dL 尿中5-HIAA 2.1 mg/day
尿中アドレナリン 7.6 μg/day 可溶性IL-2 R 267 U/ml
尿中ノルアドレナリン 117.5 μg/day アルドステロン 103.7 pg/dL
尿中ドーパミン 391.2 μg/day コルチゾール 6.9 ug/dL
尿中VMA濃度 3.59 mg/day レニン活性 2.9 ng/mL/hr
尿中VMA/Cre 4.38 mg・g/cre

いずれも正常値



鑑別診断

MIBG陽性かつ後腹膜を母地とする病変

・褐色細胞腫 ←造影CT検査の濃染パターンとホルモン検査から否定的
・神経芽細胞腫 ←年齢的に考えにくい
・carcinoid tumor
・副腎髄質過形成 ← MRIで腫瘤に脂肪成分は殆どみとめられない

稀だが
・副腎皮質腺癌 ← PET、ガリウムシンチで腫瘍のサイズに比して集積が低い
・副腎腺腫 ← MRIで腫瘤に脂肪成分は殆どみとめられない
・絨毛癌副腎転移 ← 絨毛癌の既往はない
・sarcoma
・GIST

 

術前診断:Sarcoma carcinoid tumor GIST

腫瘤摘出術が施行されました。

 

病理所見

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・腫瘍径は15.5×12×7cmで、 中心壊死のない弾性硬の褐色白色充実性腫瘍。
・やや太めの紡錘形細胞が密に縦走錯走構造をとる。
・多結節性、分葉状に増殖する細胞豊富な腫瘍。
・核周囲に空胞変性が見られる。
・核分裂像は稀に見られる。

   

免疫染色:c-KIT・CD34 (+),SMA・AE1AE3・S100・Desmin (-)

HECD34C-Kit/ α SMA/ S 100
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病理診断:gastrointestinal stromal tumor of the retroperitoneum(eGISTの一つ)

 

 

eGIST

・GISTの発生部位としては、胃が60〜70%、小腸が20〜30%である。消化管発生が大多数。
・稀に腸間膜や大網や腹膜、後腹膜から発生も認められ、extraーGIST(eGIST)と呼ばれる。
・GISTやeGISTは大きさが増大するにつれ出血や壊死を生じ、時に石灰化することがある。
・壊死により嚢胞変性(単房性または多房性)を生じることも多い。

 

GISTやeGISTとMIBG集積の関連性
・GISTは消化管壁の筋間神経叢に局在する、カハール介在細胞(ICC)を起源とする腫瘍と考えられている。
・ICCは神経と平滑筋を結びつける細胞群であり、消化管運動のペースメーカー細胞である。
・GISTのKIT、CD34の発現はICCを反映する。
・消化管外の臓器にもICCと類似するカハール介在細胞様細胞(ICLC)が存在し、eGISTに認められる。
・いずれも神経と類似性をもち、MIBG集積と関連する可能性がある。

 

MIBG陽性例や後腹膜腫瘍における鑑別では頻度は低いがGISTも鑑別に考慮する必要がある。

 

参考文献
K. W. Min et al./J.Cell. Mol. Med Vol 10, No 4. 2006 pp. 995-1013

 

 

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Moderator: 曽原 康二