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第 354 回 東京レントゲンカンファレンス[2014年9月4日]
症例3 20歳代 男性 : 歩行障害、精神症状
ウィルソン病
Wilson’s disease


 鑑別診断
   
両側視床対称性病変: Percheron 動脈梗塞、静脈梗塞、Aacute necrotizing encephalopathy、日本脳炎、ウエストナイル熱、Leigh脳症などミトコンドリア脳症、びまん性星細胞腫
両側前頭葉白質病変: 前頭葉型のALD、中毒(トルエン・一酸化炭素)、SSPE、HIV脳症
両側被殻外側の高信号: MSA-P、CADASIL、Wilson 病

 

 Wilson 病

常染色体劣性遺伝。銅代謝異常。
Kayser-Fleischer ring 角膜輪
8〜16歳頃では肝硬変にて発症。
20〜30歳代頃では神経症状にて発症。
 ─ 錐体外路症状(構音障害、ジストニア、振戦、運動失調、パーキンソン症状) 行動異常

[画像所見]
・両側対称性の T2強調像/FLAIR像 高信号
 ─ 被殻(70%)、尾状核(60%)、視床腹外側(55-60%)、中脳(50%)、橋(20%)、延髄(10-15%)、
   大脳白質(25%)、小脳白質(10%)
・中脳の face of the giant panda sign (赤核が保たれる)は10-12%
・両側被殻外側 (外包) の円弧状高信号域の頻度に関するまとまった報告はない。

Wilson 病の白質病変
・20%は抑欝、易刺激性など精神症状にて発症する(おそらく白質病変に関連)。
・白質病変は30例中6例に見られたという報告がある。
・白質病変11例の報告では、全例に前頭葉病変があり、うち7例が両側性であった。
 他の部位にも白質病変が見られたのは3例のみ、頭頂葉であった。

 

 Take Home Points

・若年発症で錐体外路症状があり、両側基底核・視床・脳幹に病変がある際には Wilson 病を考える。
・Giant panda sign は 1 割くらいでしか見られない。両側被殻外側の高信号はまとまった報告がない。
・Wilson 病の約 2 割で前頭葉の白質病変が見られ、性格変化やまれに痙攣にて発症することがある。
・Wilson 病は錐体外路症状をきたす疾患の中では数少ない、治療法がある疾患である。

 


 

参考文献
・Osborn’s Brain. Chapter 31: Inherited metabolic disorders
・Prashanth LK et al. Do MRI features distinguish Wilson's disease from other early onset extrapyramidal disorders? An analysis of 100 cases. Mov disord. 2010 Apr 30;25(6):672-8
・Barbosa ER et al. Wilson's disease with myoclonus and white matter lesions. Parkinsonism Relat Disord. 2007 Apr;13(3):185-8.
・Kim YE et al. Unusual epileptic deterioration and extensive white matter lesion during treatment in Wilson's disease. BMC Neurol. 2013 Sep 25;13:127
・Trocello JM et al. Extensive striatal, cortical, and white matter brain MRI abnormalities in Wilson disease. Neurology. 2013 Oct 22;81(17):1557


 


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