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第 354 回 東京レントゲンカンファレンス[2014年9月4日]
症例7 50歳代 男性 : 意識障害
浸透圧性脱髄症候群/橋外髄鞘崩壊症
osmotic demyelination syndrome:ODS/extrapontine myelinolysis: EPM


 鑑別診断

中小脳脚の対称性病変
・Wilson 病
・肝性脳症
・橋外髄鞘崩壊症
・急性散在性脳脊髄炎(ADEM)
・橋梗塞/出血後のWaller 変性
・白質ジストロフィー
・神経変性疾患(OPCA、SDS、SND など)
・トルエン中毒
・その他(両側前下小脳動脈領域の脳梗塞、転移性脳腫瘍、癌性髄膜炎、悪性リンパ腫など)

 

 浸透圧性脱髄症候群(osmotic demyelination syndrome: ODS)

障害部位により
 橋中心髄鞘崩壊症(central pontine myelinolysis: CPM)
 橋外髄鞘崩壊症(extrapontine myelinolysis: EPM)

に分かれる

[好発部位]
CPM:橋上部から中部の中心部、橋被蓋の内側縦束に病変が及ぶことは少ない
EPM:基底核、外包、視床、前交連、皮質下白質、脳梁膨大部

慢性アルコール中毒、低栄養状態、肝疾患、腎不全、重症感染症、悪性腫瘍末期などによる低Na血症の急速補正が契機となって、脱髄病変が形成される疾患。
ナトリウムイオン異常にのみ起因するのではなく、細胞外液が細胞内液に比べて相対的に高張な場合に起こるともされる。
(血漿浸透圧が350mOsm/L を超えると発症することが多い)

[臨床症状]
典型的には二相性
電解質異常による痙攣や脳症があり、それが補正されて精神症状は改善し、2〜3 日で正常に戻る。
その後、構音障害、嚥下障害、弛緩性四肢麻痺から痙性四肢麻痺、水平性眼球運動麻痺、昏睡、混迷状態が続く。
症状が軽く、画像診断や剖検にて偶然見つかることもある。

[画像所見]
CT:病変部は低吸収。
MRI:T1 強調像で低信号、T2 強調像で高信号。
   増強効果は通常示さないが、稀に認めることもある。
   拡散強調像
   発症早期にADC 値の低下による高信号を呈する。
   その後ADC 値は上昇傾向を示し、いわゆるT2 shine-through を認める。

 

 まとめ

両側対称性の中小脳脚病変の鑑別の一つに、浸透圧性脱髄症候群を考える必要がある。

 


 

参考文献
・柳下 章 神経内科疾患の画像診断 秀潤社 278-282 2011
・町田 徹ら 画像診断 Vol.24 No.3 332-333 2004
・Uchino A, et al. Magnetic Resonance in Medical Sciences Vol.3 No.3 133-140 2004
・Kim J, et al. Journal of the Neurological Sciences 253 66-68 2007
・Mangat KS et al. Neuroradiology 44: 768-769 2002


 


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